「はじまりのバッグ」名品探訪7
瑞々しい季節のはじまりは、新しいバッグと共に迎えたい。その存在はあたかもランドセルを買い与えられた幼き頃のように、私たちの心を昂らせてくれる。/文=山下英介、写真=渡辺修身、スタイリング=石川英治(tablerockstudio)
Hermès(エルメス)
ヴォー・トーゴというしなやかなレザーを職人が丹念に縫い上げた、エルメスが誇る名品ボストンバッグ「ボリード」。その底に、スケートボードのデッキを思わせる形のプリントレザーをあしらったのが、「ボリード・スケート」だ。大ぶりでそれなりの重量感はあるが、今にも滑り出すような軽やかさを感じさせる。縦39×横65×マチ21.5㎝ ¥2,871,000 ※参考価格(エルメスジャポン☎03-3569-3300)
固定観念に捉われず 本当に愛用できるものを
近年、私たちのライフスタイルが大きく変わっていく中で、装いと同様に改めて見直したいのが、バッグ選びだ。使うほどに味わいを深めていく、クラフツマンシップに支えられた上質さ。世界のどんな場所でも自信を与えてくれるステイタス。そんな伝統的な価値観に加えて、今求められているのは、サステナビリティに対する高い意識と、自由な感性である。
20世紀のフランスを代表する劇作家のサミュエル・ベケットは、1970年代にメンズとしては珍しいフォルムの、グッチのワンショルダーバッグを愛用していたが、その姿に違和感など皆無だ。あれから半世紀も経った今、もはや男性のバッグ、もしくは女性のバッグはこうであらねばならない、という固定観念など無用。本当に自分らしく、そして快適に過ごせるバッグこそが、一生ものになりうるのだ。
『ゴドーを待ちながら』で知られる、20世紀を代表する劇作家、サミュエル・ベケット。洒落た装いでも知られる彼は、1970年代にはグッチのショルダーバッグを愛用した。©Farabola / Alamy Stock Photo
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