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和田誠 マルチな天才は運動オンチ 平野レミ 100周年記念企画「100年の100人」

「週刊文春」の表紙を40年間担当し、2019年、83歳で惜しまれながらこの世を去った和田誠。妻の平野レミさんが、その知られざる素顔を語った。/文・平野レミ(料理愛好家)

平野レミ(語り手)

平野さん

和田さんと初めてデートをした日。「うちにおいでよ」と事務所兼自宅に誘われたんです。そしたら部屋に「文藝春秋」が開いて置いてあって、すごくインテリに見えちゃった。それまでのボーイフレンドと言ったらみんな軽薄で、「平凡パンチ」ばっかりでしょ(笑)。「文藝春秋」は父もよく読んでいたし、時折寄稿もしていたから、なおさら素敵に見えたのを覚えています。

初デートのことで今でも忘れられないのは、アパートの表札が、名刺の名前を切り取っただけのすごく小さなものだったこと。目立つことや才能をひけらかすことが大嫌いで、紫綬褒章も断っちゃったし、テレビにも出ないでしょう。だから村上春樹さんと電車に乗っても、誰も気がつかないんだそうです。「楽でいいだろ」とよく言っていました。

そんな和田さんだから、みんなに愛されていました。三谷幸喜さんに、立川談志さん、渥美清さん……。金曜日になると、決まって家にたくさん人が来て、楽しい夜を過ごしました。井上陽水さんがうちの門の前で、まるで流しの人みたいにギターを持って立っていたこともありました。和田さんが陽水さんに「息子がビートルズ好きなんだ」と言ったみたいなんです。ビートルズをいっぱい弾いてくれました。超有名人がなんでここまで、とも思いましたけど……和田さんの人望なのかな。

和田誠

和田誠

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