「RPGツクール2000 サンプルゲーム『Ⅲ』の話(後編)」

こちらは後編である。
ここでは、作品の感想を述べていく。
(「RPGツクール2000 サンプルゲーム『Ⅲ』の話(前編)」
https://note.com/m_autumnshower/n/n3ddb06258c2c

前編とは異なり、後編は非常に長くなったので、この記事を読むのが面倒なら一番下までスクロールや。
ニコニコ動画で見つけた通しプレイのリンクを2種類、一番下へ貼ってます。
15分強のものと、6分弱のものとを。
それに、すべてが集約されてる。





まず、「ゴースト」について。
この作品においては、「ゴースト」と呼ばれる概念があり、その能力を得た者が稀に出現するという設定がある。
そして、主人公の自己紹介から始まり、「ゴースト」を発動できるようになるシーンまでが、この作品のオープニングなのである。

オープニングとはいっても、オープニングその1ではあるが。




主人公は、カレス・アクセリーという金髪の青年であり、危険思想犯として投獄されている。
“あの美術館”に発表した「司教レザヘルの踏絵」という作品が、神への冒涜として捉えられた結果、危険人物として扱われることとなったのである。

劇中に、「これしきの風刺が、神への冒涜だと?」と問いかける彼のセリフがある。このセリフもそうだが、「この美術館には限りない表現の自由があった。」というセリフから、彼が大切にしているものとは自由そのものであると私は解釈している。



「ゴースト」を操れる存在は、劇中ではカレスの他に3人いる。
それが、オッゾ(青髪の男性)・エリル(赤髪の女性)・フレンゼ(白髪黒服の女性)である。

オッゾは武闘派で、鉄球を振り回す。
エリルは自然派で、銃を使う。
フレンゼは知能派で、看守から奪った武器を扱う。

「ゴースト」を得た彼らは、その後、牢獄の看守に倒されたあと、全員がとある空間へと閉じ込められる。「時の円陣」というものが、その空間に存在しており、主人公たちは魔法空間にいることが示唆されている。

魔法空間からは脱出不能である。
ただひとつの方法を除いては。

この作品には、「魔法空間には、必ずその術者が存在する。」という設定もある。
その術者を倒せれば現実世界への脱出を図れるため、術者を特定して倒すというのが、この作品内における目標である。

「時の円陣」のあるマップから東西南北(12時の方向・3時の方向・6時の方向・9時の方向)へ、奥につながる道がある。
そして彼らは、それぞれが背後の空間へ直接赴き、現状を確認する流れになる。

面白いことに道の先には、カレス・オッゾ・フレンゼ・エリルそれぞれの過去に深く関わりのあるものがある。
それが、前述の通り、カレスにとっては、「“あの美術館”にある『司教レザヘルの踏み絵』ひいては『“あの美術館”そのもの』」なのである。

カレスは、「(自らの背後に広がる空間には、心に深く関わりのあるものが存在した。この“心に深く関わりのあるもの”が魔法空間に存在する以上、『“術者”とは、お前なのか?』と指摘されると反論できない。)」といった解釈をしている。これは、「(お前らは、その先で何を見た?)」と疑問に思い、思考を巡らせた結果、行き着いた結論である。

一方で、「この解釈を以て反論する場合には『そんなことを、なぜ知っている』と揚げ足を取られ、逆に、“術者”であることの証左として扱われる可能性がある。」という危険性をも嗅ぎ取っている。嗅ぎ取ったゆえに、実際には口にせず、内心にとどめているのである。

そして沈黙を貫き、カレスは再度、美術館の空間へと逃げ込む。

ここまでが、オープニングその2である。

牢獄では、看守を。
魔法空間では、「ゴースト」の能力を持つ者を。
自らの能力を以て、倒す。
……という流れである。





ここで、少し話を飛ばす。
「カレス視点では、──。」とは、一人称視点である。
それに対して、二人称視点とは、オッゾ・エリル・フレンゼから見た視点であるが、三人称視点もまた存在する。

重要なのは三人称視点の、「自分自身でもなく相手でもなく、外から眺める存在」である。それが看守である。

さらには我々プレイヤーを含めると、四人称視点さえも存在する。


この作品のテーマは、「世界(閉鎖空間)」そのものである。牢獄しかり、魔法空間しかり、外界からは隔離された世界である。

階層的に見ると『Ⅲ』の世界観は、
「モニター越しの我々プレイヤー>『Ⅲ』>牢獄>彼ら自身の作り出した魔法空間(『ゴースト』を扱える者の内心)>登場人物それぞれ」という形になっている。
上位階層の存在は、すべてを把握しているが、下位に向かうに連れて、持っている情報量は少なくなる。

日本における、本籍地もしくは居住地と同様、入れ子の存在になっている。
(「宇宙→太陽系→地球→北半球(あるいは東洋)→日本→都道府県→郡区市町村→大字→小字→番地」とされるもの。)

非常に独特な世界観である。

数々のセリフから分かる通り、カレスは非常に聡明な人物である。そして、それゆえに、分析力に長けている。




話をとことん変えるが、『鋼の錬金術師』を読んでいるときの感覚が、『Ⅲ』に思う感想に近い。それゆえに、ハガレン好きな人には、『Ⅲ』をオススメしたい。

あちらと違ってこちらは短編であり、ニコニコ動画のプレイ動画に15分強でクリアした人がいたり、リアルタイムアタックでは6分弱でクリアした人もいる。


【RPGツクール2000】 サンプルゲーム Ⅲ https://www.nicovideo.jp/watch/sm15866151


RPGツクール2000_サンプルゲーム『Ⅲ』RTA_5分54秒06 https://www.nicovideo.jp/watch/sm3178462




書けることはたくさんあるが、おしまい!
「お前らは、その先で何を見た?」

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