見出し画像

伝えたいことがありすぎる講義をどう楽しくする?そうだ!すごろくにしよう!<対面編>

はじめに

この記事では、情報量の多過ぎる内容の講義をする時の工夫について、1つの事例を紹介します。

noteに登録して3か月、何を書こうか?と思いながら、何も書かずに過ぎていきました。
これが、記念すべき初投稿です!
せっかく登録したnoteですので、自分がやってみたことをそのまま書いてみようと思います。
私のノウハウを伝えよう!なんて思っていないので、ただの自分語りかもしれませんが、もしどなたかの役に立つことがあればうれしいです。

ゲスト講師の依頼がきた!

2019年3月頃、とある大学の教授から、「『女性リーダーシップ論』という講義のモデルとして、ゲスト講師をしてみないか?」というありがたいお誘いをいただきました。

私にご依頼をいただいた理由は、以下のようなものでした。

・大学のOGであること(正確には私は短大卒ですが…)
・大きなキャリアチェンジや、多数の転職を経験していること
・現在プロジェクトを率いており、そのプロジェクトに関わる授業も別途依頼したいと思っていること
偉くないこと

偉くない(社会的地位が高過ぎない)ということは、今回の講師としては重要なポイントだったようで、あまりに学生さんのこれからのキャリアや人生とかけ離れたすごいゲストから講義を受けても、なかなか自分事とは思えないだろう…という配慮からだったと思います。

大学のOGであることも含め、とにかく学生の皆さんにとって、「このぐらいなら自分にも実現できそう!」と感じるような身近な存在ということが今回のゲスト講師には大切なことだったと認識しています。

とは言え、IT系の企業(しかもデータセンターというあまり身近じゃない業種)に勤めているというだけで、女子大の学生さんたちには宇宙人に近い印象を与えかねないため、そこのところは気を付けていこうと思いました。

そして「女性リーダーシップ論」という講義名なのですが、私は独身で子どももおらず、女性ならではの「育児と仕事との両立」というネタがありません。
キャリアを積むにあたって、「女性だから…。」と葛藤した経験、女性として差別を受けてきたという意識もあまりなく、インパクトに欠けるのかも…と思ってご相談させていただいたのですが、「卒業したら結婚して専業主婦になりたい!」と考える学生さんもいらっしゃるので、家庭内や身近なコミュニティの中で誰もが求められるリーダーシップにも触れてほしいとの追加要望をいただきました。

たくさんのキャリアにおける経験を、楽しく聞いてほしい!

自分自身の職歴を振り返ってみても、これをだらだら話されたらつまらないだろうなー…とまず最初に考えました。
完全に自分語り大好きなおばさん状態になりそうです。
かといって、特にIT系の職種についてあまり詳しくない学生さんに端折って話しても、リーダーシップについて考えるどころか、よくわからない言葉の羅列になってしまう…。

ASCIIさんに書いていただいた記事「“元・幼稚園の先生”がデータセンターで働き、プログラミング教育支援に携わるまで」にをお読みいただければ、私の大体の経歴はわかるのですが、経験した職種それぞれに思い入れや学生さんに伝えたいことがありましたし、経験を重ねながら変化していく心境や自分自身の成長に触れていくためには、特定の箇所だけをピックアップするのは良い方法ではないと考えました。

その上、仕事上のリーダーシップだけでなく、家庭や身近なコミュニティでのリーダーシップにも触れていく…となると、更に話したいことがたくさんでてきてしまい、その時点で知らないおばさんの話に飽きてぼんやりした顔をしてしまう女子大生の姿が浮かんできてしまいました。(自分だったらたぶんそうなるので…)

たくさんの転機、そしてその中にあった自分自身のリーダーシップ、人生…人生…人生…。

人生ゲーム?

こうして思いついたのが、自分自身のキャリア紹介を人生ゲームのような「すごろく」仕立てで、遊んでもらいながら話を聞いてもらうワークショップでした。

できあがったワークショップ

結果的に、ワークショップはこのようなメニューとなりました。

1. アイスブレイク
2. ワーク1「すごろく」
3. ワーク2「講師のリーダーシップグラフを作る」
4. まとめ

すごろくで講師の人生をなぞり、リーダーシップがどこに隠れているかを探す「宝探し」のようだ!と教授からご感想をいただき、「人生の中にキラキラ! すごろくゲームでリーダーシップを考えよう」というすてきなタイトルをつけていただきました。

1. アイスブレイク
受講する学生にはスマホを持ってきてもらい、mentimeterというサービスを使ったアンケートを実施することにしました。
まだリーダーシップに対する理解があまり深まっておらず、自分事にはなっていないという前提で、リーダーシップと聞いて最初に思い浮かんだことを一言入力してもらうようにします。
結果はその場でみんなで見て、「今のみんなのリーダーシップに対する認識はこんな感じ」というのを確認します。

スマホを持っていない学生がいた場合、友達に代わりに入力してもらうなど、全員が参加できるような配慮も考えておきました。
私がIT企業に勤めている、プログラミング教育支援のプロジェクトをしているという点ともつながるよう、少しデジタルを取り入れた内容を意識していました。

リーダーシップ1_2019-

2. すごろく
すごろくのために準備した教材は以下の点です。

・すごろくシート(グループに1枚)
・さいころ(グループに1つ)
・コマ(1人1つ)
・ワークシート(1人1枚)
・補足資料(1人1部)

すごろくには、仕事の話と家庭生活の話、両方を混ぜ込んで作ったのですが、そのために何とも赤裸々なすごろくになりました。
とてもじゃないですが、一般に公開できるものではなく、これは授業を受けた学生さんの胸にしまってもらおうと思い、終わった後で回収させてもらうことにしました。

すごろくを回収してしまう代わりに、私が経験した職業を解説した補足資料をお渡しすることにしました。
仕事の特色や、仕事上関与するステークホルダー、1日の流れの例、似たような職種との比較など、興味を持った業種について詳しくわかるように工夫しました。

すごろくで遊ぶ時に必ず必要となるのは、コマさいころです。
コマはダイソーで見つけたガラスタイルにしました。
何となく女子っぽいかな?という浅はかな理由です。
さいころは、小学校でプログラミング教育の教材として使っているmicro:bitに、ぽんと投げると1~6までの数がランダムに表示されるプログラムを書きこんだものを準備しました。

ここでも、自分の今の仕事(プログラミング教育)につながる要素をさりげなく入れることで、多くを語らなくても私のイメージが伝わることを期待しました。
もし、ここにとても興味を持つ学生さんがいらっしゃれば、後で質問をしていただいたり、またいろいろと協力できる面が出てくるのではないかとも考えました。

ワークシートには、進んだマスに記載されている内容を見て、自分なりに「リーダーシップ度」をメモしていきます。
0を中心に、プラスかマイナスか、最終的に点を線で結ぶとグラフになるように作っていきます。
私の人生の浮き沈みがあらわされるようです…。

すごろくで自分が止まらなかった目のマスにも、恐らく自然と目が向きますし、リーダーシップ度を短い文章の中から推測してグラフに表そうとすることで、その出来事の背景なども含めていろいろ想像を巡らせてもらえるのではないかと期待していました。

3. 講師のリーダーシップグラフを作る
個人に渡したワークシートには、すごろくが終了した時点ですでに学生さんが評価したリーダーシップグラフができています。
今度はグループワークで、それをみんなで見せ合い、お互いの違いを共有します。

1つの出来事に対しても、リーダーシップを感じた、感じなかった、強さの違いなど、それぞれの理由を話しながら、みんなの意見で改めてグループごとのリーダーシップグラフをまとめてもらいます。

4. まとめ
グループでまとめたリーダーシップグラフを見てもらいながら、私自身が作ったリーダーシップグラフを披露します。
まずは、リーダーシップグラフに正解や不正解はないこと、私が作ったリーダーシップが正解というわけではないことをお話し、体験した本人の感覚と、自分たちの想像とのギャップを感じてもらったり、思いもよらなかった視点に気付いてもらうことを期待しました。

最後に再びmentimeterを使い、今度はあなたにとっての「リーダーシップ」とは?という質問に、一言で答えてもらいました。
最初に取ったアンケートと見比べ、その違いを感じてもらって、授業を終了しました。

リーダーシップ2_2019-

たくさんの内容を一気に伝える時に気を付けること

とにかく、講師が一方的にひたすらスライドに書いてある内容を読んだりしないこと。
伝えたいことが自然に目に入るように、そして、興味を持ったことに対してもっと知ることができるように準備をしておくこと。
適度に学生が参加できる場面があること。
そのあたりがポイントになるのではないかと思いました。

講義の後で共有いただいたリフレクションシートでは、A4にびっしりと感想を書いてくださった学生さんもいらっしゃり、皆さん自分がイメージしていたリーダーシップとは違ういろいろな形もあるということに気が付いてくださったようです。

これは2019年度の講義のお話でしたが、実はこの後2020年にも同じワークショップを実施したので、<その2>として紹介させていただきます。

最後に…。
私がワークショップデザインを学んだのはこちら!
とても良いプログラムでしたので、おすすめします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?