伝えたいことがありすぎる講義をどう楽しくする?そうだ!すごろくにしよう!<オンライン編>
はじめに
この記事では、情報量の多過ぎる内容の講義をする時の工夫について、そして、更にそれをオンラインで実施した時の工夫や反省など、1つの事例を紹介します。
今回の内容は、こちらの続きです。
2019年のワークショップの反省
実は、ありがたいことに2020年度も同じ講義でゲスト講師をご依頼いただきました。
奇しくもコロナの影響で、大学の授業はすべてオンライン(Zoomでの対面授業)。
2019年度はグループでワイワイすごろくができたのですが、オンラインではどのようにしたら良いのか…。
2019年の学生の反応
自分としてはけっこう工夫して臨んだ、自己満足全開のワークショップだったのですが、実は参加した学生さんの反応はとても良かったか?というとそうでもありませんでした。
すごろくの間はそれなりに笑顔も見られてはいたものの、特に後半は少し退屈そうな表情も見られました。
ただ、事後に共有いただいたリフレクションシートからは、他人事、自分にはあまりないと感じていたリーダーシップが、実は身近なもの、自分にもできる部分があると気付いたというような感想もけっこうあり、私の講義の後も教授がフォローのための講義を実施していて、ねらいはある程度達成できていたと考えています。
ワークショップの実施が5月であったこと、2年生が中心であることなどから、学生さんがグループでの話し合いにはあまり慣れていなかった可能性もあります。
その上、グループワークをフォローするサブファシリテーターもつけることができませんでした。
机間巡視していても、進みが遅いグループにどう声をかけたらワークを進めてもらえるのかわからず、自分自身中途半端な声掛けに終始していた感があります。
最後まで心を開いてもらうコツがつかめなかったという後悔が残りました。
オンラインで実施するにあたっての不安
今回実施するワークショップで一番の不安は、参加者の反応です。
タイトルにもあるように、楽しくないと意味がないのです。
情報系の大学ではないため、学生の皆さんはコンピュータに慣れ親しんではいません。
スマートフォンはほとんどの方が使っていますが、それが好きで使いこなしているか…というと、きっとそうではないでしょう。
そんな学生さんに、オンラインで、「参加している」「楽しい」と思ってもらうのは、とても難しいことのように感じました。
また、2019年度に感じたように、学生さんは知らないおばさんにそう簡単に心を開いてはくれません。
興味を持ってあれこれ聞いてくれる学生さんもほとんどいません。
全員に問いかけても、返事は返ってこないという前提で、工夫を考える必要があると思いました。
検討したこと
すごろくを「する」か「しない」か
そもそもすごろくはアナログなゲームなので、難しいからやめるという選択肢も考えていました。
あまりやりたくはないけれど、自分の人生を一方的にお話してしまおうか…でもそれだと、双方向のツールを使う意味が全くないし…。
すごろくのアプリを作って、Zoomのブレークアウトセッションを使ってグループごとに遊んでもらうことも考えましたが、それも学生さんがどの程度Zoomを使い慣れているのか、またどんな環境でアクセスしてくるのかなどが全くわからなかったので、あきらめました。
結論として、すごろくは画面共有を使って私が操作し、以下の手順で参加してもらうことにしました。
① 講師が学生さんを1人指名する
② 画面共有したさいころアプリをスタートさせ、指名した学生さんに「ストップ」と言ってもらって講師側でさいころアプリを停止
③ 画面共有したすごろくシート上のコマを、出た目の数だけ講師が動かす
④ 止まったマス目の内容を、指名された学生さんに読み上げてもらう
⑤ 次にさいころを振る学生さんを指名してもらって②に戻る
さいころアプリは、プログラミング教育の教材としても利用しているScratchを使って作りました。
リーダーシップグラフを「作る」か「作らない」か
講師が用意したリーダーシップグラフの解説のみにし、興味のある項目についてひたすら質問を受けるということも考えたのですが、やはり参加している感覚が薄くなることを懸念しました。
また、前回は自分の感覚と、他の人の感覚(リーダーシップ度の高低)が異なるということや、自分が気付かなかった視点に気付くという点にもこだわっていたため、自分でリーダーシップグラフを作ってみないとワークショップとして気付きの少ないものになってしまうという危惧があり、すごろくでは参加してもらえたとしても、ワークショップとは言えなくなるのではないかと考えました。
結局、リーダーシップグラフは「作る」ことにしました。
mentimeterを「使う」か「使わない」か
前回は、スマートフォンを持っていない学生さんや、その場でうまく操作ができなくて時間がかかってしまう学生さんがいることを想定し、その場合は他の人に代わりに入力してもらうことにしていました。
実際に、けっこうな人数が自分ではできずに周りにお願いしていました。
今回オンラインでそのあたりのフォローができるかどうかを心配していたのですが、まずは全員Zoomにアクセスできる環境にある前提であることと、ワークショップをサポートしてくれるメンバーに入ってもらえることになったため、「使う」ことにしました。
ZoomチャットにアンケートへのURLをサポートメンバーに貼ってもらったり、スライドにもQRコードを表示したり、いくつかの方法でアンケートの画面にたどり着けるように考えました。
できあがったワークショップは
1. アイスブレイク
2. ワーク1「すごろく」
3. ワーク2「講師のリーダーシップグラフを作る」
4. まとめ
結局前回と大きく変わらない内容で実施することにしました!
リーダーシップグラフを作るための工夫
今回一番工夫したのが、リーダーシップグラフを作るための工夫だったと思います。
課題は2点
・個人ワークでどのようにリーダーシップ度をつけてもらうか
・みんなの意見をどうグラフに集約するか
個人ワークでどのようにリーダーシップ度をつけてもらうか
ここは、Googleフォームですごろくのマスの内容に3段階の評価をつけてもらうことにしました。
このアンケートの結果は、Googleスプレッドシートに書きだされるようにします。
あらかじめスプレッドシートには集計用のシートも追加しておき、全員の結果を以下のルールで集計しました。
・リーダーシップ度0が一番多い項目…その項目の値は0とする
・それ以外…プラスを選択した人数×5+マイナスを選択した人数×-5の計をその項目の値とする
集計されたアンケート結果を、折れ線グラフで表し、それを学生さんの意見を統合したグラフとさせてもらいました。
前回のグループワークに代わる内容
前回は、自分の作ったグラフを他の人のグラフと比べて意見交換をしてもらい、グループみんなの意見を集約したグラフを改めて作ってもらったのですが、今回は自動集計されたグラフを見て特徴的な部分を説明しました。
例えば、この中で一番特徴的なのはマイナスがついた6番の部分。
また、ゼロになった箇所がいくつかあるということを、ここで確認してもらいました。
オンライン授業でたくさんの内容は伝えられたのか?
2019年度は、途中(特にグラフ作成のワークあたり)で少し退屈そうな表情が見られたのですが、リフレクションシートからは、大体ねらいは達成できていたと評価していました。
オンラインの場合、私自身全員の表情をあまり気にする余裕がなかったり、個人ワークの際は学生さんにビデオをOFFにしても良いと伝えていたので、途中で退屈そうだったかどうかはわかりませんでした。
すごろくは、全員には当たらなかったし、参加度が少し前回に比べて低かったかもしれませんが、リフレクションシートでは概ね「楽しかった」との感想が書かれていました。
オンラインの授業で、(Zoom以外の)いろいろなツールを使って授業を受けることについては、「こんなやり方もできるんだ!」という新鮮な驚きを感想として書いてくれた学生さんもいました。
また、授業終了後にそのまま残って質問をしてくれた学生さんもいらっしゃって、そういった余裕の時間も大切であると気付くことができました。
実は、今回のリフレクションシートを見たところ、前回よりもたくさん書かれていたり、内容が濃かったりしていたように思います。
興味の対象も、授業の仕方に対することや、私のキャリアに対すること、リーダーシップに対することなど、さまざまでした。
このリフレクションシートを見る限り、自分の言いたかったことは伝わっていたし、資料も、学生さんの興味に応じてうまく使っていただけていたと認識できました。
まとめ
オンラインでも、すごろくゲームやグラフ作りのワークを通して、たくさんの伝えたい内容を飽きさせずに伝えることができたと思います。
オンラインの授業に慣れてきた学生さんたちでしたが、普段の授業とは違うアプローチに、興味を持って楽しく取り組んでもらえたようです。
前回よりも準備にはかなり工夫を要しましたし、今回サポートメンバーにも入ってもらってできる限り万全の体制で臨んだのが功を奏したのだと思います。
但し、オンラインならではの当日突然のトラブル(Zoomの障害など)があるとここまでスムーズにはできなかったとは思いますが、これについてもあらかじめサポートメンバーや教授の皆様と打ち合わせをして、代替の環境についても考えておくとより安心できるのではないかと思いました。
最後に…。
私がワークショップデザインを学んだのはこちら!
とても良いプログラムでしたので、おすすめします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?