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東京港野鳥公園と浅間山公園ですよ

GWに行ったところのうち自然公園2つについてまとめるのがすっかり遅くなってしまいました!Lv100第八十五話を書き終えてからも第八十六話を早く書きたくてそのまま進めてしまっていたんですよね。

GWは一見動水博シーズンのように見えて、気候的にはそれは正しいのですが、普段動水博に見学に行かない……、つまりそこまで内容に興味を持っていない来場者で混みあってしまうので、あんまり心穏やかには見学できないタイミングでもあるのですよね。
今年は例のアレが5類(5類だって相当なもんですよ)に降格になって人々の油断を誘うタイミングでもありましたから、混雑する場所にはなおさら抵抗がありましたし。

そこで、かねてからもっと飼育下ではなく野外の生き物も見ていくべきだと思っていたとおり近場の自然公園に手を付けていくことにしたのです。

結果として、動水博ではあまり掘り下げられない生き物の野外での居ずまいに触れて、気付けることがたくさんあったのでした。

東京港野鳥公園

4月29日に。

東京湾の大森のあたりに残された干潟を中心とした、野鳥の暮らす環境を中心とした自然を保護している公園です。
といってもいかにも海岸!という場所は意外と少なくて、海沿いの森林公園という感じで森の多い湿地帯です。

物流の中心地から敷地内に入ると突然、公園のように都会的に整えられたのではない自然の緑に囲まれ、人工的な風景との落差に驚かされます。
そして敷地内にいても、外の設備や交通量の気配と、敷地内の自然のギャップが常に感じられ、完全な都会だと思っている場所でも野生の世界がすぐそこまで迫っていることが強く示されます。

主役に位置付けられているシギやチドリが特に長い距離を渡る鳥であることも、遠いと思われている大自然と東京湾を強く結びつけます。

あっそうだ。今回は野鳥の写真を載せるんですけど、バードウォッチャーとして自慢できるような写真を目指しているかたから見たら機材選びの時点で失敗しているようにしか見えない写真がたくさん並びますが、私は全然そっちを目指していないんですね。気付いたことの記録のために写真を撮っているだけですので。バードウォッチャー同士の写真自慢がしたいやつぁ帰んな。

この敷地内外の差。

ゲートをくぐると有料の海側と無料の陸側に分かれていますが、どちらも入り口の時点では真緑です。
シギやチドリを見てみたいので、まずは海側へ。

公園のような芝生もありますが、すぐにこんな緑のトンネルを通り抜けることになります。

道は一旦大きな道路を越える陸橋になりますが、そこに植えられたトベラにアオスジアゲハの姿が。かなり都会的なチョウではありますね。

アカガネサルハムシ。野鳥公園と言いつつ昆虫を探し始めるときりがなさそうです。

広い湿地が見えてきました。しかしその向こうに物流センターみたいな建物も見えます。こんな地域にこんな広い水辺が確保されているなんて、なんてありがたいことでしょうか。

カワウが悠々と広い空中を進んでいきます。

チュウサギ?とカルガモ、見慣れた鳥ではありますが、人間の手の届かないところにいるとその行動も違って見えます。

缶に残った食品を分け合うハシブトガラス。このあたりの鳥達にとっては公園の中も外もかまわないのでしょう。

ネイチャーセンターという建物に入りました。このように自然観察のポイントや野鳥の生態に関する展示を行っていますし、大きな窓から外の野鳥を観察することもできます。

というわけで、窓の外の干潟にチュウシャクシギが現れました。
サギと同じような体型ですが大きさはだいぶ異なり、野外で見るとこんなささやかな草に隠れてしまうほど小さな鳥です。

しかしコチドリはさらに小さいのです。
こんなに小さな鳥達が東南アジアやオーストラリアとシベリアを往復しているなんて、大きさからは信じられないようなことです。

チュウシャクシギが尖った翼を素早く羽ばたかせて飛びます。
サギもシギも長い脚で水際を歩いて長いクチバシで水底または泥の中から餌を取り上げるという普段の行動は似ていますが、翼の形は全く異なっています。
考えてみればツバメも小さな鳥ですが長く尖った翼を持ち、長い距離を渡ります。そして餌の取り方は翼の形が異なるアブラコウモリと似ているのです。
普段の行動より渡りをするかどうかのほうが翼の形や飛びかたに強い影響を与えているように見えます。

道はさらに海側に続き、本格的な観察小屋も現れます。

そちらからはさらに間近に、さらに広い干潟の鳥の姿が見られます。

屋根のない観察デッキからは磯が見え、石の上にキョウジョシギが集まっていました。
さっきのコチドリと似て見えますが、餌を集めるのに向いている地形がかなり異なるようです。シギやチドリの種類がたくさんいるのはこういう住み分けによるんですね。

チュウシャクシギがアマツバメと見まがうような飛びっぷりを見せます。彼らが長い距離を渡ることができる秘密の一端に触れたような気がします。

水際でカニが張り合っています。自動車の走行音がひっきりなしに聞こえてくるような都会なのに野生の世界があるのです。

翅が欠けたクロアゲハが現れました。鳥のクチバシから逃れたのでしょう。「野鳥公園」と名乗っているということは、鳥が存在しうる基盤となる充実した環境や鳥よりずっとたくさんの生き物が存在するということなのですね。

陸側の区画にやってきました。人の手がほどよく加わった里山を思わせる風景です。

シュンランです。別の場所での盗掘が話題になりましたが、菌類と共生しているので土地から切り離すと栽培することがほぼできないのですよね。

湿った野原にシオカラトンボが現れました。まだ若くて黄色いオスのようです。

敷地の外に乾いた町が見えます。「こっち側が本当の世界だ」……そんな風に感じてしまいます。

農地を再現したエリアです。

トホシテントウ、植物の葉を食べるテントウムシの一種です。
植物を食べるテントウムシを見ると、哺乳類だったら肉食が悪者呼ばわりされるのにテントウムシでは作物に害をなすということで植物食が悪者呼ばわりされるという、生き物に善悪のイメージをなすりつける業を思ってしまいます。

小川の中に小さな二枚貝が。

こちらにも観察小屋があり、今度は池が見えます。冬にはカモが来るのでしょう。

今回はオオバンが姿を見せました。
実はこの池からも物流関係の建物や、羽田から飛び立ったばかりの旅客機g見えます。旅客機からの大都会の風景にこんな場所が含まれているなんて誰も気づかないのでしょうか。それともけっこうはっきりと緑なのでしょうか。

浅間山公園

5月3日に。

「あさまやま」ではなく「せんげんやま」です。多摩県府中市の中に急に出っ張ったような小さな山というか丘なのですが、なんでも古相模川が堆積させた岩石を古多摩川が削って武蔵野台地ができ、そのときに削り残されてできた山である多摩丘陵の飛び地のような山なのだそうです。
といってもすっかり緑に覆われているのでどんな岩石でできているかはなかなか見えないのですが。

今回目当てとしていたのはムサシノキスゲという固有種の花でした。ムサシノキスゲはゼンテイカ(ニッコウキスゲ)の変種で、施設に移植されたものを除くとこの8ヘクタールばかりの丘にしか生えていない絶滅危惧種なのです。

見学順路もないですしさっそくお見せしましょう。これがムサシノキスゲの花です。お花屋さんにあってもちょっと小さめのユリということで通じそうな立派な花ですね。
分類上はユリには含まれないそうですが、姿はユリにそっくりです。

やはりユリと同じようにチョウを誘っているようです。クロアゲハが訪れているところが見られました。

あまり木で混みすぎていない雑木林の林床に生えています。

こういう明暗の差がくっきりしているところには生えていませんでした。

林の管理に関する掲示でも触れられているのですが、どうやら常にほどほどに薄暗くなっているところにしか生えないようです。

そういえば他にムサシノキスゲを見に来たかたのグループが「全山で咲いてるわけじゃあないのね」と話しているのが聞こえたのですが、本当に全山ムサシノキスゲが生えやすい環境にすると今度は受粉させるチョウがいなくなったり他の植物が姿を消したりするのでしょうね。

ちょっと無惨な写真ですが、カイガラムシがとりつき、途中で折れたつぼみから出る汁をアリがなめています。
ただ大事にされているだけでなく、浅間山の他の生き物と関わっていることが分かります。

他の植物や小動物も見てみましょう。主にコナラやイヌシデなどが生えた南関東らしい落葉広葉樹林です。

イヌシデの翼果です。熟すと1枚ずつはがれて飛んでいきます。

公園などではこじんまりとした姿しか見られないエゴノキですが、サクラのように大きく育っていてちょっと圧倒されてしまいました。

キンランもムサシノキスゲと並んで愛でられていました。

花に夢中になるハナムグリやカミキリ。

カナヘビです。街中の小さな丘なので昼に脊椎動物に出会うことはあまりないです。

東京港野鳥公園と違って静かな住宅街ではありますが、ここも町に囲まれています。
小さな祠のような神社があって、コノハナノサクヤヒメを祀っているのですが、植物以外特に変わったことがないからサクヤヒメなのかなーと思ったらどうも富士山がよく見えるところに祀られることが多いようです。
ニニギノミコトがイワナガヒメを帰してサクヤヒメだけと結婚した話のせいでサクヤヒメにちょっと偏見あるんですよね。岩も綺麗じゃん。

そういうわけで花だけ愛でるのはなんなのでまた別の季節にも行こうと思います。

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