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LIBRARIAN|維月 楓の小部屋

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モーヴ・アブサン・ブック・クラブの司書、維月楓の小部屋。詩人・研究者・翻訳家。古今東西の女性/クィア詩人の作品を読み解くことを通して、新たな生の軌跡に敬愛を捧げている。
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2022年6月の記事一覧

ヒルデガルトの小径|金田アツ子|花と十字架の祈り

 今回ご紹介する金田アツ子さまの絵画作品には、ヒルデガルト・フォン・ビンゲンにゆかりのハーブが描かれています。目に美しいだけでなく、自然療法に利用される効能を持つ、植物の新たな魅力を伝える作品をお楽しみください。  ひとつ目の作品は、少女時代のヒルデガルトを描いた人物像です。  8歳で修道院に入り、16歳で永久誓願のヴェールを受け修道女となったヒルデガルト。幻視を見ながらも、世には語らなかった少女時代。顔の回りに優しく垂れるヴェールが、内に潜む情熱を柔らかく守るよう。

ヒルデガルトの小径|こうのかなえ|花園の秘密は少女の手の中に

 霧とリボン企画に初参加となる、こうのかなえ様の作品は、鮮やかな植物と幾層にも重なる暗色の背景が織りなす作品世界から物語が溢れ出てくるようです。  少女時代から幻視が視え、8歳で修道院に入ることを決意したヒルデガルドが後世に遺した薬草学の知恵と、その秘密を受け継ぐ少女たちを繋ぐような作品をどうぞご堪能ください。  一人花束を手にたたずむ少女。その周りを可憐なヒナゲシが囲み、純粋さを表すスズランがひっそりと揺れている。庭の影は、少女時代の絡まりあった感情の目覚めを思い出させ

ヒルデガルトの小径|&Robe|静寂の祈り—夏至のタブリエ—

 偉大な修道女ヒルデガルト・フォン・ビンゲンに捧げられる本企画展、初参加の&Robeさまによる2シリーズがお披露目となります。  修道院での生活は、労働と祈りと休息のサイクルというとてもシンプルなものでした。労働には、自給自足のための庭仕事以外に、修道僧たちの衣類、さらには司教や法王の法衣の仕立ても行ったそうです。  衣服を身に着けることで、ヒルデガルトの生活の追憶を辿るだけでなく、彼女の行っていた手仕事にも思いを馳せることができそうです。  作者自身によって撮影された美し