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LIBRARIAN|維月 楓の小部屋

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モーヴ・アブサン・ブック・クラブの司書、維月楓の小部屋。詩人・研究者・翻訳家。古今東西の女性/クィア詩人の作品を読み解くことを通して、新たな生の軌跡に敬愛を捧げている。
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2022年5月の記事一覧

巻頭詩&エッセイ|維月 楓|モーヴ街2周年に寄せて―生と美の可能性―

 かの人が曇り空の下で想いを遊ばせた土地で、私は灰色のコンクリートの上に生きて、文字を飛ばして生きる者として精進しており、菫色の詩集を開けたのですが、そこには日本の言葉と化けたその人の詩が踊っていました。今や海路でも渡れない遠くのあなたに、詩集を拓けばわたしは会うことができるのです。もはや後にした故郷の話に出てくる空に浮かぶチェシャ猫の姿のように、紙面に浮かぶ文字はなぜか眼光の形として心に射し込み、熱く燃える印象を付けられました。 *  霧とリボンさま主催のアートプロジェ

Belle des Poupee|「美しき時代」のブティック

Text|維月 楓  ベル・エポック―美しき時代。新しさの誕生、都市文化の栄え、異国との接点、19世紀末から第一次世界大戦勃発までの華やかなパリを人はそう呼ぶ。  本企画展のテーマ「菫色×都市」を主題とし製作された、選りすぐりの逸品たちをご紹介いたします。作家であるBelle des Poupeeさまご自身によって撮影された写真とともに、ベル・エポック随一の百貨店のカタログを一緒に覗いてみましょう。  凛とした心の流れを感じる、紫の直線的な波の上で、モーヴ色のリボンが遊