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LIBRARIAN|維月 楓の小部屋

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モーヴ・アブサン・ブック・クラブの司書、維月楓の小部屋。詩人・研究者・翻訳家。古今東西の女性/クィア詩人の作品を読み解くことを通して、新たな生の軌跡に敬愛を捧げている。
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2021年9月の記事一覧

【別便】スクリプトリウムvol.3|維月 楓 & 永井健一 & Du Vert au Violet《2》|プライヴェート・ポプリ〜アンソロジー・シリーズ

Text霧とリボン  六日間に渡りお送りしたオンライン開催 霧とリボン企画展は、一昨日無事閉幕致しました。アーカイヴはいつでもここスクリプトリウムに保管されていますので、折に触れて、馨しい植物標本をご高覧頂けましたら幸いです。  本日は、菫色の写字室の残り香として「別便」をお届け致します。 *  小壜シリーズに続き、プライヴェート・ポプリの《アンソロジー・シリーズ》をご紹介致します。  はじめてプライヴェート・ポプリに触れる方に、特におすすめのシリーズです。ての

スクリプトリウムvol.3|維月 楓 & 永井健一 & Du Vert au Violet《1》|プライヴェート・ポプリ〜小壜シリーズ

Text|霧とリボン  ブランド設立を記念して調香したポプリは、ヴァージニア・ウルフ『オーランドー』冒頭より、少年オーランドーが自然の中で詩作する3つの光景が題材です。  「Nature and Letters|自然と文学」「Sixteen|16歳」「A Summer’s Evening|夏の夕暮れ」と題した3つのポプリを、「小壜シリーズ」と「アンソロジー・シリーズ」2つのパッケージで展開します。  本日は小壜シリーズのご紹介です。  永井健一さまのドローイングを

スクリプトリウムvol.3|永井健一《2》|詩作するオーランドー

Text霧とリボン  秋風がカーテンを揺らし、スクリプトリウムにひらかれた一冊の書物のページの上を過ぎりました。  月桂樹、楢の木、サンザシ、シダ——夏の追憶と共に、ページから、様々な植物の青々しい香りが漂ってきます。  ひとりの少年が詩作する風景を、ひとりの画家が描きました。  本ドローイング・シリーズの題材は、ヴァージニア・ウルフの小説『オーランドー』。  本展にてローンチする霧とリボンのポプリブランドとのコラボで発表する、オリジナルのトワル・ド・ジュイのため

スクリプトリウムvol.3|佐分利史子《1》|丘へ

Text維月 楓  ヴァージニア・ウルフが1928年に書き上げた『オーランドー』。男性から女性へと変身し何百年の時を生きぬいた主人公の物語は、ウルフの先見性に驚かされる魅力に満ちた小説です。  今回の企画展では、オーランドーの少年時代がカリグラフィ作品となりました。果敢で早熟ながら少し不器用な少年が、「孤独」という人生の宿命を初めて味わった姿が瑞々しく描かれた一場面です。  まず目を引くのは、うねるような文字の流れと色の移り変わりでしょう。「ぼくはひとりきりだ」と呟