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LIBRARIAN|維月 楓の小部屋

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モーヴ・アブサン・ブック・クラブの司書、維月楓の小部屋。詩人・研究者・翻訳家。古今東西の女性/クィア詩人の作品を読み解くことを通して、新たな生の軌跡に敬愛を捧げている。
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2020年12月の記事一覧

佐分利史子|ライラックの海のうえ[1368]

TextKIRI to RIBBON  英仏文学を題材としたカリグラフィ作品を発表する7番地・スクリプトリウム内。本イベント《モーヴ街のクリスマス》では2点の新作をお届け致します。  最初にご紹介するのは、アメリカの詩人エミリー・ディキンソン「ライラックの海の上[1368]」。モーヴ街図書館司書・維月 楓さまによるエミリーの息遣いに寄り添う翻訳と共にどうぞお楽しみ下さい。 *  印象的な初行「ライラックの海の上」が最初の大文字「O」に写され、聖夜を迎えようとする今

新訳付作品集『Emily’s Herbarium』のご紹介|クリスマスに寄せて

Text|Kaede Itsuki  一段と冬の寒さも深まり、クリスマスソングの聞こえる季節となりました。クリスマスといえば、愛情に満ちた人々が輪になって集まるような暖かい気持ちと、どこか心の芯に凍てつく孤独に気付かされるような少しの寂しさを感じます。年の瀬の高揚感と終焉への身に沁みる冷たさという両極端の気持ちがせめぎあう季節。19世紀に生きたエミリー・ディキンソンの詩のなかにも同じように二つの感情が揺らぎ、さまよい歩くような詩が多くあります。  今秋に開催された「金