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【読書記録】2024年3月

新年度がぬるっと始まった。
外では桜が咲いている。
ここ数年、さまざまな事情でゆっくり季節を味わう余裕がなかったのだが、今年はようやく穏やかな心持ちで桜餅(道明寺)を食べることができた。
さて、そんな3月の読書記録は
計30冊。
量は読んだが、身についているかが微妙。
4月は少しペースを落とそうと思っている。



『走る道化 浮かぶ日常』 九月

こちらは京大卒のお笑い芸人、九月さんによるエッセイ集だ。
ツイッター(現X)のリポストから、存在を知った。

万物の揚げ足をとりたい。かっこよく言うならば「日常の些細な場面にもどこかしらに面白さを見つけながら生きていきたい」。

『走る道化 浮かぶ日常』 九月

この一文の通り、九月さんは日常のさまざまな出来事に対して、揚げ足をとり続ける。

「てんてこ舞い」ってなんだよ。ちょっと楽しそうだな。舞うなよ。

『走る道化 浮かぶ日常』 九月

彼曰く、京大生は「計算高い権力思考の実用エリートボンボン」などではなく、「頭でっかち屁理屈ぐうたら空想自我持ち肉団子」らしい。自虐が過ぎる。でも、世界をとても魅力的な角度から眺められる面白い人だ。

僕たちそれぞれ、不思議なまま、生きていこう。色んなものを見ていこう。誰にも言わずに持って来た、りんごでもかじりながら。

『走る道化 浮かぶ日常』 九月

僕もぜひその不思議なグループに混ぜて欲しい。

『シティガール未満』 絶対に終電を逃さない女

ペンネームからして面白過ぎる。ちなみに僕も終電を逃したことがない。ただ、家が好きなだけだが。

その服が好きかどうかよりも、その服を着た自分が好きかどうかが、私の服を選ぶ指針である。

『シティガール未満』 絶対に終電を逃さない女

僕は、自分の持ち物へのこだわりが強い方だ。気に入ったものは、多少高くても買うし、長い間大事に使い続けてしまう。その選定基準は、「持っていて、自分の気分が上がるかどうか」。自分の中に生まれるトキメキを大事にしたい。

絶望の淵に立たされて魔がさした瞬間に、ふと足元を見て、長く履くつもりで大枚はたいて買ったのに今死んだらもったいないな、と踏みとどまることができるだろうか。もう少し踏ん張ってみようと思えるだろうか。

『シティガール未満』 絶対に終電を逃さない女

長年大事に着ていたお気に入りのチェスターコートに、この冬、穴が空いてしまった。来年の冬に向けて、「今死んだらもったいないな」と思えるような良いものを僕も選定中である。

『太陽帆船』 中村森

こちらは短歌集。発売されるまで、知らなかった歌人さんなのだが、僕が大好きな千種創一さんという歌人さんがこの本の監修をされたとのことで、「気に入るに違いない」と購入してみた。結果、当たりだった。

帆を揚げる 会いたい人に会いに行く それはほとんど生きる決意だ

『太陽帆船』 中村森

歌集はこの歌から旅を始める。人との出会いや別れ、誰かに対する強い思いなどが、色濃く美しく描かれている。全編を通して、気に入った歌が多く、気づいたら読書ノートのページがいっぱいになっていた。

君の声 涼しい書体だったこと 忘れずにいて本を読んでる

『太陽帆船』 中村森

『地雷グリコ』 青崎有吾

職場の上司が、「これは面白かった!」とゴリ押ししていた本。忙しいはずなのに、たくさん本を読む方なので、「どんな本を読まれる方なのか」と気になって、手に取ってみた。(人のオススメの本を読むことで、その人の人となりが垣間見えたりして楽しいというのもある。)

期待していた以上に面白かった。誰もが一度はやったことのある「グリコ」や「じゃんけん」といった遊びに、少し独自のルールを加えて、高校生たちがガチの頭脳バトルを繰り広げるのが堪らない。一見、相手が有利なのに、その裏をかいて勝利を手にしていくヒロインの強かさは見ていて気持ちが良い。
そして何より、ページの組み方の面白さよ……。これは、上司とも話したのだが、ハラハラしながらページを捲る構成になっていて、「うまいな〜」と思わず舌を巻いてしまった。

ハリウッド映画的な、次を期待させる終わり方をしたので、続編があるのかもしれない。次はどんな遊びで僕らを楽しませてくれるのか、期待して待っていようと思う。

『ヤクザときどきピアノ』 鈴木智彦

ヤクザ専属ライターが、映画『マンマ・ミーア!ヒア・ウィー・ゴー』で流れたABBAの『ダンシングクイーン』に痛く感動し、ピアノに挑戦する実話。
YouTubeに「積読チャンネル」という番組があり、そこで紹介されていて知った一冊である。(自分だけだと絶対に手を伸ばさないジャンルなので、こういった出会いはとても嬉しい。)

とにかく、エピソードが強い。優雅なはずのピアノレッスンに、時々溢れ出てしまう「ヤクザ語彙」がアンバランスで、個性的。読んでいて、とてもスパイスになる。
以下は、ピアノ教室に入った時の一文だ。

ドアを閉める際、ついクセでわずかだけ開けてしまった。警察が急に踏み込んできても取材相手が監禁罪に問われないようにという配慮なのだが、ピアノ教室では音漏れの原因になるので本末転倒というか、俺の自然体はどうしても世間からずれる。

『ヤクザときどきピアノ』 鈴木智彦

先日、職場の会議室に入る際に、この一節を思い出してしまい、マスクの下で少し顔をニヤつかせてしまった。まあ、職場に警察が踏み込んでくることは、滅多にないと思うし、監禁罪には問われないと思うよ。
ちなみに、彼が無事にABBAの『ダンシングクイーン』を弾くことができたのかは、YouTubeに実際の動画も上がっているので、それと合わせて楽しんでほしい。


少し長くなってしまったが、今月は以上である。
先月の反省を生かして、月の前半に書くことができた。
来月は、GWに旅行に行ってしまうので、どうなることやら。



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