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ここはすべての夜明けまえ(間宮改衣)を読んだ

 ので自分用感想メモ。
 割と取り留めもないです。ネタバレあり。


1.作品についての感想・メモ

①感想

 ページ数こそ少ないけどひらがなの多い文体ゆえに読むのに苦労したため思ったより時間がかかったけど、面白かったです。
 一般文芸のデビュー作はたまに「(作品の出来不出来とは別に)なぜこの賞に応募した?」と思う作品をちょくちょく見て、この作品もなぜハヤカワSFコンテスト? 文藝とかすばるとかの新人賞向けでは? と思ったけどこれは読み終わるとなるほどハヤカワSFコンテストに応募するだろうし特別賞なのも納得しました。上記新人賞系列でも受賞した気はするけど。
 ラストの主人公の行動は作中でもトムラさんに理解されなかったけど、「(生育環境ゆえに)受動的に存在していた人間が能動的に自分の人生を選択することができるようになった」と言う点において、明るい終わり方だと思いました。

②作品の主眼

 「自我」であり「自己選択」だと解釈しました。

 読み終わって振り返ると、これは主人公だけに限らず作中において「自死」が明確な「自己選択」として定義されています。冒頭で死にたかった主人公や自さつそちを利用した浩太さんとか。

 浩太さんが主人公が父親から受けていた性暴力をはじめとした虐待について謝った時の反応と、ラストの主人公の選択についてのトムラさんの反応が同じなところが、(台詞に反して)大変わかりやすいなと思います。
 主人公は生育環境やゆう合手じゅつで身体的成長が止まってしまった=ライフステージを進むタイミングを失ったがゆえの反応だと思ったけど、最後に「種としての合理性」を踏まえた選択をしたコミュニティに属するトムラさんが同じ反応をしているのを見るに、環境ひいては当人の属する社会に依らない自我の発露・自己選択って相当難しいし、(社会が許容する方向性にない限り)理解されないんだな、と感じました。浩太さんの行動が許容されたのは当時の社会が許容していただけの話である。

2.作品にかこつけた雑感・自分語り

①雑感・自分語り

 上記で当該作品内において「環境ひいては当人の属する社会に依らない自我の発露・自己選択って相当難しい」と語ったけど、(社会に依らない)自我の発露・自己選択ってこの主人公の年齢に至るまでとは言わずとも相当成長しないと出てこないものではないでしょうか。
 もしかしたらそう思うのは自分だけかもしれないし、他の人はいやそんなことないからwと言う反応なのかもしれないけど、私自身は明確に自我の発露・自己選択ができるようになった(実際には社会に依った意見だとしても「これについては自分が選択した」と明確に自負できるようになった)、と感じるのは正直30超えてからだな、と感じたので。

 割と序盤で出てくるエピソードで、ゆう合手じゅつを受ける際の同意書についての主人公の考えたことが大変生々しい。

 けど、ましな日なんてのはかぞえるほどでだいたいうつ、どうにか死ねないのかなっておもったけど、ゆい一の希ぼうだったまどはほんのすこししかあかなくて、ここは病いんだからわたしのからだになにかあってつながれたモニターがそれをひょう示したらすぐにお医者さんとかんごしさんがとんでくるのだし、もうこうするしかないんだなってやがてわたしは同意しょにサインしたんでした。

ここはすべての夜明けまえ/間宮改衣

 能動的に同意してるから書くのではなく、環境的に書くしかないから書く、というのは同意書に限らず現代においてもよくあることだと思うし、私もこういう経験は覚えている限りでも何度もあります。

②メモ

 こういう「社会に依らない自我・自己選択が能動的にできるようになった」と自負できるようになるのはいつからなのか、そもそもそういうことができるものなのか、少し勉強したいので今後読みたい本メモ。さくっとグーグルで調べた程度なのでズレてるかもしれません。


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