見出し画像

普通のふりして生きてきた~ちょっと病気がちな奴が健康なふりをしている回想録⑩~

~前回のあらすじ~

 血小板でも、アレルギー反応を起こす人はいる。

抗がん剤も終わり、たまに輸血をするだけののほほんとした日々

予後が信じられない程良いらしい私。

輸血も洗浄血小板に変えた事により、アレルギー反応を起こす事もすっかり無くなり、ご飯食べてTV見てリハビリでちょっと動いて寝るだけの生活になりました。

もう具合悪い時が嘘だったかの様に視界がクリア!!

まだ血は足りないし、下からの血もだっぱだぱ出てるんだけどな!防水シートもまだ外せないし!若干経血量は減ったけど、ナプキンで言う所の『特に多い日の夜用』が『多い日の夜用』になったなってくらいよ、ほんと。

抗がん剤投与後の体調

投与中から体のむくみは酷かったです。もうパンッパン。むくみ=水分(薬剤)を出す為にお茶をいっぱい飲みました。その甲斐あってむくみは順調に解消されてったんだけど、尿がとんっでもなく臭い。

病棟のトイレ何であんなに臭いんだろうな、と思ってたけど、抗がん剤ってこんなにおしっこ臭くなるのか……。点滴で薬剤入れるんだから当然っちゃ当然だけど、全然想定外でした……。

それ以外に出てきた症状と言ったら、やっぱり脱毛。

ドラマみたいにハッと目を見張ってしまう程ではないにしろ、ふとした事で髪が桜みたいに散っていきました。

この時カレンダーは四月の終わり。私が自らの髪の毛を桜の花弁に例えるのも、無理はないだろう。

私は毛量が多い。加えて直毛である。そのサラサラの自慢の直毛が、歩いたり頭を振ったりするたびに、はらはらと舞い落ちるのである。そんな時に洗髪をしてもらった。

汚い話だが、入院してから私は一回しか風呂に入ってない。毎日体は拭いてるけどね。

看護師さん「しばらくお風呂に入ってないですけど、今日は入りますか?」

私「まだ生理中だし、前にシャワー入った時に、上ってから貧血で気持ち悪くなっちゃったから怖いんですよねー。でも頭は痒いから洗いたい……」

看護師さん「じゃあ洗髪だけしましょうか」

という訳で病院理容室の人に来てもらって、病棟トイレの所にある洗髪台で頭を洗ってもらいました。普通に美容室で髪を洗ってもらう感じ。

優しくわしゃわしゃ頭を洗ってもらう私氏。天にも昇る心地とは、このことである。

私「はぁ~~、気持ちいい~~」

理容師さん「良かったです~」

適温のお湯で頭を洗って、シャンプーしてもらい、タオルで拭いてドライヤーまでしていただく。

理容師さん「ああ……ごめんなさい……髪が……!」

ほええ、何~?と目を閉じて夢見心地の私、洗髪台と床を見て仰天しました。ロングヘアからショートカットに切りましたってくらい髪が落ちてる。

そして頭を触ると、若干薄くなった気はするが、まだ頭を覆っているツヤツヤの髪の毛。まだ一部の隙も無く生えそろってるぞ、私の頭どれだけ毛量多いんだよ。この量には通りかかった看護師さんもビックリである。

キレイな髪がこんなに抜けちゃって……。と残念がってくれる理容師さんですが、私は病棟内でこんなに髪の毛散らかしてごめんなさいっていう気持ちであった。黒い海の様になってるが?

さっぱりして病室に戻り、ベッドに腰を掛けてゆっくり過ごす。や~、さっぱりした頭で見る水戸黄門はまた格別である。

格さん「この紋所が、目に入らぬかー! こちらにおわすお方をどなたと心得る! 恐れ多くも先の副将軍、水戸光圀公にあらせられるぞ!」

助さん「一同、ご老公の御前である。頭が高い、控えおろう!」

若りし里見浩太朗かっけぇ~……チクチク、ポリポリ……あれ、何やらパジャマの中が痒い。……まさか!?

TVにくぎ付けだった目をベッドの上に戻します。何という事でしょう、かつてないくらいに髪の毛が抜けているじゃありませんか。

洗髪で大量に髪が抜けたのがきっかけだった様に、「私も」「私も」「俺も」「僕も」と髪の毛が抜けていった。まるで髪の毛達が一抜けを争っている様……いや、最後に残らない様に我先にと抜けていこうとする、と言った方が正しいか。

阿呆な事を言ってないで、とりあえずコロコロしよう。自分の前をコロコロコロ。後ろを向いてコロコロコロ。

キレイになった! さて、続きを観ようかな、とTVを振り返ると、そこにもう髪の毛が落ちている。

えええええ! もう!?

結果、コロコロをかける端から新たな髪の毛が落ちてきて、またコロコロをかけ……の繰り返し。落ち着いて続きを見る暇もなくドラマの放送が終わってしまった。

あっちを向いてコロコロコロ。こっちを向いてコロコロコロ。着替えの時にパジャマの中も(特に襟元)コロコロコロ……。

コロコロ三日目にして私は悟った……。がん患者の再現VTRで髪が抜けるのにショックを受ける患者さんをよく描いてるけど、患者さん自身は絶対こっちの方がストレスになっとるわ。だって終わらないんだもん。苦行か。

私は髪の毛長いまま抜けたからこんなもんで済んでるけど、抗がん剤前に髪を剃っちゃった患者さんなんかは、それまで生きてた数ミリの髪の毛がパジャマの中に抜け落ちて、チクチクして痛いらしい。

どちらにしろ拷問かよ。

その日から私は、髪の毛が早く抜けてしまう様に、ヘドバンしまくった。

まあ、それでも5月の退院日まで全部抜けきらなかったんですけどねー! どんだけしぶといんだよ、私の髪の毛!!

神からの投げ銭受け付けてます。主に私の治療費や本を買うお金、あと納豆を買うお金に変わります。