エスプレッソの悲劇






私は10代のとき、
飲み物一杯で何時間もカフェに居座る人だった。


なんせケチである。
頼むのだっていつも300円ちょいのコーヒーだ。



カフェオレは頼まない。
理由は単純で、高いからである。



なんとかラテとか期間限定の甘いやつは
もってのほかで、
あれはデートで財布の紐がゆるんでるときに頼むやつだ。






とある日、
カフェ童貞らしき男子高校生が飲み物を頼んでいた。

数分後に出てきたのは
小人用か?ってくらいちっちゃいマグカップ。



あれはエスプレッソだ。






それを見た男子高校生は一瞬固まった。


「少なっ」

彼の心の声が聞こえる。

店員さんは「なにか?」の顔。






私には分かる。
彼がなぜエスプレッソを頼んだのか。


理由は単純、安いからである。


エスプレッソはコーヒーと同じ300円ちょいなのだ。




カフェドリンクの値段の高さに
仰天したであろう少年。

マックにしとけばよかったと、後悔しているに違いない。



「コーヒーは飲めないから、エスプレッソ、、、。
よく分からんけどカフェオレ的な感じだろうか、、、」





しかし出てきたエスプレッソを目の前に
もう引き返せない少年。



少年は大人しくエスプレッソ片手に
すまし顔で席に向かった。


そして彼はこれから
エスプレッソのあの痺れるような苦さを
味わうこととなる。






なぜ分かるのか。




私も安さにつられて
同じ目に遭ったことがあるからである。


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