「後ろ通ります」



最近パン屋でバイトをしているんだけど、
少し前から高校生の女の子が学校の職業体験で来ている。

その学校というのは特別支援学校で
その子は発達障害なのだ。



舌足らずで幼くて、いい返事をする、ソフトボール部っぽい雰囲気の子


頑張って言われた作業をこなしているんだけど
時々出る謎行動にお局パートさんたちはけっこう疲れてる。



わかる。

何がわかるって
疲れてるお局パートさんの気持ちも分かる。


そしてなにより
発達障害の子の気持ちも分かる。



なぜなら私も立派な発達障害だからである。




「作業場は狭くて危ないから、誰かの後ろを通るときは、後ろ通りますって言ってね」

初日に店長がその子に教えてた。



それから、その子は狭くても狭くなくても
全然危なくなくても
誰かの後ろを通るとき、必ず
「後ろ通ります!」と言うようになった。


初日に教わったことだから
脳みそに完全にプログラミングされたのかもしれない。


「後ろ通ります!」のときだけその子はロボットになるのだ。



ちょっとかわいいなって思いながら見ていた。




とある午後
私がレジをやってると混んできて、
袋詰めを手伝ってもらおうと思ってその子を呼んだ



お客さんがはけて
ありがとう、助かったよーとその子に言うと


「ウシロトオリマス!」
と、私の後ろを駆け抜けて
颯爽と厨房に戻っていった




え、今??



突然発動した「ウシロトオリマス」に
呆気を取られた私





そんな彼女だけど、やっぱりどこか憎めなくて
私は大好きなのだ





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