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野火走る風の説話の残る里

野火のびはしかぜ説話せつわのこさと

むかし、をとこありけり。人のむすめをぬすみて、武蔵野へ率て行くほどに、ぬす人なりければ、国の守にからめられにけり。女をば草むらの中におきて、逃げにけり。道来る人、この野はぬす人あなりとて、火つけむとす。女、わびて、

武蔵野はけふはな焼きそ若草のつまもこもれり我もこもれり

とよみけるをきゝて、女をばとりて、ともに率ていにけり。

伊勢物語 第十二段
オスカー・ココシュカ《風の花嫁》1913 - 1914年
バーゼル市立美術館

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