安部派(清和会)は分裂寸前。

 安倍・元首相の一周忌は2023年7月8日増上寺で法要が営まれたが、自民党内で最大派閥を誇る安部派の会長ポストは空席のままだ。この問題に巡ってメディアは喧しい。
 会長ポストは塩谷氏と下村氏の会長代理が運営しているが、彼らは保守的リーダーシップに欠けると言われる。一方、萩生田・政調会長、西村・経済産業相、松野・官房長官、高木・国対委員長、世耕・参院幹事長の「5人衆」と呼ばれる若手有力者たちは、「集団指導体制」を掲げて派閥支配を狙っている。
 そのため安部派は分裂寸前と言えるが、彼らは閣僚や党幹部など要職に就いており、次期首相の有力候補でもある。長老の森・元首相からの後押しもあるが、彼らは安倍政権下で数々の失政に加担した。
 安倍政権は7年8カ月も続いたが、その間憲法や民主主義や立憲主義を軽視し、「モリカケ桜」問題を隠蔽し、国会で118回も嘘をつきまくった。その他にも数々の自分の利益になる政治スキャンダルが露呈し、行政の私物化が判明し、わが国の勤勉で真面目な社会を破壊した。
 アベノミクスは円安と株価上昇でごくごく少数の大企業と資産家さらに金持ちにしたが、先進国の中で唯一、給料が上がらなかった。物価は高騰し、庶民の暮らしは苦しくなった。
 外交では自分のイメージアップにしか興味がなく、地球儀俯瞰外交という名の金ばらまき外交を展開した。米国のトランプ前大統領にべったりくっついて、対米従属を深め、高価な兵器を買わされ、防衛費2倍の禍根を残した。
 そして、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との癒着問題も忘れてはならない。教団の政治団体「国際勝共連合」と自民党は長年にわたって選挙で協力し合い、とくに清和会は党内で最も関係が深い。
 両者の結付きは安倍政権下でさらに強化され、教団が推進する時代錯誤の家族観が党内に広まった。安倍派会長の極右と呼ばれる萩生田氏は、地元八王子の教団関連施設に何度も足を運んだことが報道された。
 国民が求めているのはこういった体質からの決別である。実際には安倍派的な政治家ではないと思われていた岸田首相が安倍氏以上になりふり構わない政治を強めている。安倍政権の失政を清算し、自民党は改革を進める必要がある。
 安倍派の分裂は避けられないかもしれないが、それはむしろチャンスである。新しい時代に適応するためには、革新的な政治の台頭が求められる。派閥や政党再編を通じて、創造性の高い指導者や政策が現れ、わが国は新しい展開を迎える可能性がある。

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