最近、ガソリン税の議論が喧しい。

 ガソリン税とはガソリンに課される揮発油税と地方揮発油税の総称である。現在、1リットルあたり53.8円の税金が徴収されるが、そのうち25.1円は暫定税率分であり、本来は28.7円が適用されるところである。
 購入価格はガソリン本体価格、石油製品関税、石油石炭税(2.8円 原油や石油製品に対する国内消費税)、ガソリン税(揮発油税+地方揮発油税)、環境税(2.4円)、消費税(10%)の総計で、6割前後は税金が占め、税金の塊だと言っても良い。
 ガソリン価格は生活に直結する。高騰には様々な要因があるが、とくに問題になるのは消費税である。消費者はガソリンの本体価格に加えて、ガソリン税や石油石炭税などの間接税も支払わなければならない。しかも、これらの間接税は消費税の課税対象となっており、二重課税という不合理な状況になっている。
 さらにガソリン税や軽油引き取り税の一部は、道路特定財源として道路の建設や整備に充てられるが、現在では道路需要は飽和状態にあり、道路特定財源は無駄遣いや予算の水増しに使われているという批判が強い。
 一方、政府はトリガー条項という制度を導入している。これはレギュラー・ガソリンの全国平均価格が3か月連続で160円を超えた場合、ガソリン税の特則税率分の1リットル25.1円を減税するというもので、政府の裁量で発動される。
 現在、全国のレギュラー・ガソリン平均価格は182円でも、政府はトリガー条項を全く発動する気はない。国民の困窮はさておき、それどころか岸田首相は国会解散後の総選挙に向けて、これを集票マシンの一つとして利用すると見られている。
 また世界的な原油市場の動向にも無関心である。世界的には原油は過剰であり、そのため産油国は減産を余儀なくされている。新型コロナウイルスの感染拡大により、原油需要が大幅に減少し、国際価格は一時1バレルあたり約40ドルまで暴落した。ポスト・コロナによる経済活動の再開によって需要が高まった現在でも、国際価格は約80ドルである。
 22年度のわが国の輸入総額は前年度と比べると34.7%も増加し、123兆円と過去最高額を示し、21兆円を超える貿易赤字を記録した。この背景には、世界的なインフレおよび記録的な円安の二重の影響がある。
 とくにエネルギーや資源関係の輸入額は非常に大きく、石油や天然ガスなど化石燃料の輸入は35兆円を超えた。これでは経済的にも環境的にも持続不可能な状況で、太陽光や風力などの再生可能エネルギーへの転換を急ぐべきである。

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