プライマリーバランスについて。

 2024年7月29日、経済財政諮問会議(議長・岸田首相)で、財政の健全化の指標として重視する国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)が、25年度に8000億円程度の黒字に転換するとの試算を示した。
 PBは財務省が好む言葉で、社会保障や公共事業をはじめ様々な行政サービスを提供するための経費(政策的経費)を、税収で賄えているかどうかを示す指標である。これまでのわが国のPBは赤字であり、経費の一部を借金で賄ってきたが、黒字になるように政府を締め上げてきた。
 今年の予測については、まだ詳細は定かではないが、企業業績の好調や物価高に伴う消費税の大幅な増加が続くことから、今年中にも黒字となる可能性もある。財務省の狙い通り、今の物価、税金、保険料、光熱費などの高騰が続けば、労せずともPBは黒字になる。しかし、国民の負担を課する前に、政府は防衛費や農業、道路、河川、港湾などをはじめ、さまざまな歳出を可能かぎり節約すれば、予算の30%ほどは節減できそうである。
 25年度の予算編成では、そのために賢い支出を徹底する考えを示したが、黒字化が実現すれば、小泉政権下で政府の目標として掲げられてから初めてになる。1990年のバブル経済の崩壊後は、税収の落ち込みや景気てこ入れを狙った財政出動で赤字が続き、BP黒字化の期限は先送りが繰り返されてきた。
 財政の健全化にはこれで良いかもしれない。しかし、昨今は国民救済の必要な時期で、財政の黒字ではなく、景気回復を優先しなければならないという声が大きい。14年に無理やり消費の増税を行い、その結果がGDP(国内総生産)成長の足かせとなっているのは言うまでもない。あの時増税しなかったら、19年は600兆円を超えて、その時点で税収も70兆円を上回っていたと考えると、消費の増税こそが財政の悪化の原因と言え、諸悪の根源である。
 しかも、先行きに不安があるのか、財務省はご丁寧にも人口減少が加速する30年代以降も実質GDP成長率が安定的に1%を上回る成長移行ケースと、中長期的に0%台半ばの成長に止まる2つの試算を提示した。いずれの場合でも、33年度まで黒字が続くと試算している。
 財政健全化に向け、政府は債務残高対GDP比の安定的な引き下げを目指している。成長移行ケースでは、国と地方を合わせた公債残高の名目GDP比が33年度に169%と22年度の211%から大きく低下する。
 先の話よりも、現実が大切で、政府は文字通り経世済民に全力を尽くし、何よりも景気を回復させる。その結果、経済は成長し、税収も増える。財政を黒字化したければ、第一に景気回復である。

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