フレイルと猛暑。

 この2週間ほど北海道と東北地方を除いて、全国的に連日38℃、39℃の猛暑に見舞われている。日中の気温が上昇し、外出の機会が減少すると、心身の活力が低下する「フレイル」になるリスクが高まる。
 近くの公園でも気温が35℃を超えると、高齢者の姿はめっきり見なくなる。通常、公園の一角では高齢者が集まり、将棋を指したり、雑談を交わしたり、散歩をしたり、体操をしたりして大賑わいになる。しかし、冬と夏の1ヶ月ほどは、彼らに鬼門の時期である。この間に1人くらいはあの世へ行ったのか、施設へ行ったのか、それ以後現れなくなる。
 この災害級の猛暑の中で高齢者が自宅でどのように過ごしているかを知る由もない。最大7万円の国民年金の支給額では、夫婦合わせても14万円にしかならない。中には加入年月が短いため、月3万円程度しか受け取っていない人もいる。
 この1、2年の猛烈な物価高のせいで、生活費はもちろん、自宅に閉じこもっていても、
冷房や暖房を頻りに節約する人が多い。そのために亡くなった人もいるかもしれない。当然、この閉じこもりの間に高齢者はフレイルの状態が進行し、余命が短くなる。
 フレイルとは、主に加齢や疾患によって身体的・精神的にさまざまな機能が徐々に衰え、心身のストレスに脆弱な状態である。外から見える症状としては、手の振りが少なく、足が上がらず、すり足で、左右のふらつきがある。また歩幅が狭く、歩行速度が遅いなど、高齢者特有の歩き方がそうである。これらの症状は後期高齢者になると、進行性で、ほとんど非可逆性となる。
 具体的な症状としては、体重の減少や筋力の低下、疲労感、歩行速度と持続距離の低下などがある。細かい点は別にして、大体の目安で良いが、100歳以上は全員がフレイルであり、このことからも加齢現象と言える。したがって、75歳以上の後期高齢者が毎日公園参りをしても、年々フレイルの状態は進行する。
 フレイルは知られている割には、その頻度に関する確かな資料は乏しい。散見する報告によると、フレイルは50代から見られ、その予備軍を含めると、6割以上が該当するという。また高齢者全体の7〜10%がフレイルで、75歳以上の高齢者では20〜30%を示し、年齢とともにその頻度は増加するとする文献もある。
 東京都健康長寿医療センター研究所によると、2012年に行った全国高齢者パネル調査の参加者のうち、訪問調査に協力した65歳以上の高齢者約2200名のデータを解析した結果、8.7%の人がフレイルに該当した。
 プレフレイルは40.8%、健常者は50.5%で、女性であること、高齢であること、社会経済的状態が悪いことが、フレイルの割合を高める傾向があった。他の報告では、75歳未満で5%以下でも、80代前半では20%を超え、85歳以上になると約35%に上昇する。

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