放漫財政。

 近年、わが国の国家予算は増え続けている。2023年度の通常予算は約110兆円で、その他に200兆円ほどの特別予算があり、国が一年間に使うお金の合計は、300兆円を超える。
 一方、国民総生産(実質GDP)は550兆円前後で、この15年間多少の上下はあっても、あまり変わりはない。そうなると、総計の予算はGDPの54.5%を占め、経済に大きな影響を与えるのは言うまでもなく、官僚が経済を回していると言えるところがある。
 これほどの大金を使いながらも、30年以上も経済は低迷し、財政は世界でも最大級の赤字で、国と地方を合わせると、総額は約1200兆円でGDPの2倍以上に達した。こうなるまで放っておいたのは、独占的に政府と国民の財布を預かっている財務省の責任にほかならない。
 財政赤字が大きいという意味は、政府が借金をしていることだが、借金をすること自体は悪いことではない。しかし、借金を返却するために必要なお金が足りなくなった場合は問題で、これは財務省の怠慢の結果としか言いようがない。
 しかも、長期にわたるデフレ環境の経済の中で、この1年ほど諸物価の値上げだけを進め、何の準備もないまま、いきなり国民にインフレ環境を突きつけ、これらすべては国民の責任だといわんばかりに増税を押しつけるなんてとんでもない話である。
 財政赤字を評価する方法にはいくつかある。その中でも国際通貨基金(IMF)が提唱する完全雇用財政赤字は、経済が最大限に活性化していると仮定した場合の財政赤字を示す。これを基にすると、2023年度の完全雇用財政赤字額は、約37兆円に上るという試算になる。
 この37兆円はわが国の経済が本当にできることよりも、国がお金を使いすぎて、無駄に使っているという証拠である。すなわち実力以上の財政赤字を垂れ流し続けている点から、放漫財政と言える。
 わが国民はバブル経済崩壊以降ずっと緊縮財政であると思い込まされ、これを強いられ、国民生活はずいぶん貧しくなった。しかし、以前から政府は一貫して放漫財政を続けていると説く経済家や専門家が多く、メタボ財政から脱却する必要があると喧しく叫んできた。
 難しい理屈は別にして、役人の天下りとこれに伴う公共事業、全国的な数々の土木工事、リニア新幹線、東日本大震災の復興、東京五輪、軍備の拡大、準備が行われつつある大阪万博などに次々と巨費が投じられるのは、百聞は一見に如かずである。
 こうなるのは必然である。

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