鶏卵価格の下落について。

 鶏卵は人類にとって貴重な食料であるが、その価格の変動は食料の需要と供給のバランスに影響を与える重要な問題である。昨年はウクライナ情勢と鳥インフルエンザによって、鶏卵の生産が減少し、需要が供給を上回る状況に陥った。
 その結果、店頭の価格は昨年の4、5月に高騰し、1パック(10個)190円前後だったものが350円にも跳ね上がった。すると、需要は大幅に減少し、加工業者や消費者は高価な鶏卵に代わる輸入品や代替品を探したが、それでも不足感は解消されなかった。
 実際には、鳥インフルエンザは発生した養鶏場だけで感染を抑制することができたため、生産はそれほど低下しなかった。しかし、インフレの趨勢に乗ろうとする動きや生産調整の要請があり、生産者はすぐに対応できなかったので、多くの鶏卵が廃棄されたという。牛乳も同様で、生産調整のため一時は牛を殺せと言われて一騒ぎが持ち上がった。また牛乳を廃棄するくらいならチーズなどの加工品にすれば良いという声が高かった。
 今年に入ってからは、鳥インフルエンザが収束し、生産者の努力で生産が回復した。しかし、値上がりしすぎて買えなくなったままの需要は回復せず、供給が上回る状況となった。2月には1パック200円前後まで価格が下落し、再び業界は生産抑制を呼びかけている。
 別の視点からも気になる点がある。これは鶏卵と同様と言えるかどうかは分からないし、自分で買い物をしない自分の感覚であるから錯覚かもしれない。大抵のスーパーの入り口の正面は果物コーナーで、現在はリンゴ、ミカン、イチゴ、バナナが山のように積まれて、華やかな装いで買い物客を迎える。
 イチゴやバナナは季節問わず並ぶが、リンゴは今が最盛期か、この1カ月ほど大ぶりの見事なリンゴが果物コーナーの真ん中を占めている。産地は青森県や秋田県や長野県が多く、価格はほぼ同じで、リンゴ1個当たり150円から250円もする。果物はすでに贅沢品となったのだろうか。果物専門店なら良いだろうが、庶民相手のスーパーにしては高価な特産品ばかりを扱っているように思えて違和感を覚える。
 案の定、買い物客を見ると、果物コーナーを素通りする人が多く、果物をカートに入れる人は少なく、また果物の補充や詰め替えをしている店員の姿をみたことがない。以前は1個50、60円のリンゴがこれほども値上がりしては普通の人は買わない。レジに並んでいる買い物客のカゴに入っているのは、主に食パン、魚や肉や野菜で、ほとんど果物は見ない。   
 思い違いならいいけど、気になったので一言。

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