中国の電力事情。

 国家エネルギー局によると、発電設備容量は9月末に前年同月比8.1%増の約24億8000キロワットに達したと公表した。単位は異なるが、21年の電力の生産量(TWh)は、中国8537、米国4381、インド1669、ロシア1157、日本1030、ブラジル680、カナダ633であった。
 中国では昨年9月から電力不足が顕在化し、急ピッチで電力の増産に務めた。中国の経済は資本主義でも、実際は国家統制主義であるから、衣食住の確保はむろんのこと、物価の上昇も低いだろうと思われるが、それがそうでもないようだ。
 長期に続くコロナ禍によって、わが国と同様に輸入品の値上がりは免れない。昨年7月の石炭価格は前年比で65%も上昇したにも関わらず、電力価格が下落した地域もあった。
石炭火力発電事業者の中には、操業を続けると損失が広がるため、発電を控える企業が現れ始めた。この問題が中国全土の電力供給不足を招く要因となり、何度か深刻な電力不足が発生した。
 9月には工業用電力の使用を制限するだけでなく、一部の地域では住宅や学校、病院、ショッピングモールなどの商業・公共エリアにも及び、危機的状況に陥った。とくに暖房が必須の東北部では、市民の怒りと混乱が生じた。
 昨秋の電力不足は石炭価格の上昇と石炭不足によって、主に石炭を主燃料とする火力発電事企業が発電を抑制した。22年春には一応の改善を見たが、中国のような大国となると、そう簡単にはいかない。
 正常化の宣言が行われた現在でも、電力不足の傾向は依然として存在する。工場の生産停止や制限が続く地域もあり、供給連鎖(サプライチェーン)全体に支障が生じ、製品の供給に問題が残っている。
 それにしても、1年で8.1%の電力を増産することなど尋常ではない。政府を挙げて取り組んだのだろうが、風力発電の設備容量は16.9%の約2億5000万キロワット、太陽光発電は28.8%の約3億6000万キロワット増加した。
 コロナ禍によるガスや石炭や石油など燃料の高騰を受け、再生可能エネルギーの発電容量を大幅に増やした。現在の電源の供給の割合は石炭63%、石油0% ガス3%、原子力5%、自然エネルギー29%、その他0%である。
 わが国は石炭29%、石油3%、ガス37%、原子力6%、自然エネルギー22%、その他3%で、中国と比較すると、わが国はガスによる発電の割合が高く、石炭と自然エネルギーによる発電が低い。
 中国は炭素を出さない資源由来のエネルギーの割合を段階的に引き上げ、25年までに20%とする方針を持っている。すでに目標には到達したが、石炭による火力発電を抑制したという説が有力である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?