給料が増えない理由?

 2023年の春闘では、賃上げ率が3.6%となり、前年(2.2%)に比べて1.4ポイント増加した。これを金額にすると、平均は11245円を示し、前年(6898円)に比べると、4347円高かった。
 しかし、この1、2年の物価高に比すると、微々たる上昇である。一方、東京証券取引所に上場する大手企業の最終利益の合計は前年に比較すると、2.1%増加し、約36兆円に達し、2年連続で過去最高の利益を更新した。内部留保(利益剰余金)も555兆円と過去最高を更新し、21年度の516兆億円から13%も増えた。
 そのうち従業員に還元されたのは、ごくわずかに過ぎない。厚生労働省の調査によると、22年度の平均賃金は0.4%の微増に止まった。企業の利益は急増しているのになぜ給料は増えないのだろうか?
 高賃金は最も直接的な形で従業員に還元する方法で、景気にも大きな影響を与え、国を潤すが、この30年間賃上げは凍結状態にある。インフレの現在でも、依然としてその延長上にある。経済界は生産性が低い、IT化が遅れている、景気の低迷、先行きの不透明感などから給料の引き上げはできないという。
 しかし、低賃金の本当の原因は他のところにあり、理由も明快である。経団連(経済団体連合会)の前進である日経連(日本経営団体連盟)は、1995年に「新時代の日本的経営」という報告書を公表した。当時の経済界は中国や韓国などの途上国の追い上げに遭い、新しいビジネスモデルへの転換を迫られていた。
 それに挑戦できない無能な経営者は、安い労働力で企業収益を保つように、その場しのぎの方法を打ち出した。こんな安易な経営方針の結果が現状であり、国際競争に生き残るはずはない。
 必要であっても、一見、無駄に見える部分を徹底的にそぎ落とす新自由主義の推進である。政権与党の自由民主党と賃上げを嫌う経済界は結託して、現在まで賃金を上げないという政策をとり続けている。
 23年の春闘の賃上げ率は記録的と言われたが、法人企業統計の数字を見るかぎり、これによる人件費の増加は確認できない、そういった厳しい見方もある。賃上げが進んでいると喧伝する一方で、企業は利益を積み立て、内部留保を増やし続けている。
 こういった状況で、23年の春闘以降利益と内部留保が急増したのを背景に、企業はわずかに高い賃金引き上げ率を許容した。企業は大幅な賃上げをする原資は十分に保持しているにもかかわらず、賃上げをせずに利益を増やしていることに対して、社会的な批判が強まるのを恐れている。

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