国民の総意。

 2022年12月14日自由民主党は、同党のホームページ(HP)で、岸田首相が13日の役員会で、防衛費増額に伴う財源の一部を増税で賄う方針を示した際、「今を生きる国民の責任」と発言したが、「今を生きるわれわれの責任」に修正した。
 政府関係者によると、事前に用意した発言案には「国民」と記されていたが、首相が上から目線だとして実際には「われわれ」に言い換えたという。国民でもわれわれでもどちらでも良いが、防衛費増額の問題は国民の総意で、国民の責任だと考えているのだろう
 情報が極めて乏しく、しかもメディアの報道に偏っていることから隣国で大国にあるにも関わらず、わが国では嫌中感情が高い。以前から中国における反日活動や東シナ海ガス田問題、靖国参拝問題、尖閣諸島問題、中国で行われている反日教育、中国産食品・中国製品の安全性問題などの諸問題によって、わが国では中国に対する嫌中感情が広がった。
 10年9月の尖閣諸島中国漁船衝突事件直後から中国各所で官製反日デモが繰り広げられ、多くの日本料理店などの日系企業が襲撃を受けた。それ以後わが国では嫌中意識は飛躍的に高まった。
 これに10年頃から米中の対立が激化し、米国の代理店としての安倍政権が強力に嫌中気分を盛り上げ、防衛費倍増の下準備をした。1年ほど前のNHK世論調査では91%も嫌中派が占め、軍備拡大に賛成する人も多かった。これほど大多数を占めては多勢に無勢で、国民の総意と言っても良い。岸田氏の本音はこの辺りにあり、やはり、国民の責任と言ったのである。
 といっても、わが国を取り巻く安全保障環境は昨日今日に急に悪化したのではない。中国はここ何十年も国防費をぐっと増やして軍事力を強化してきたし、北朝鮮も核ミサイル開発を続けた。この間、わが国は何をしてきたのかと言われそうだが、国民は軍事大国になることを望んでいない。米国と同盟関係を結んでいる以上は中国と朝鮮を敵に回す可能性は高いが、両国の本当の狙いは米国である。
 嫌中なら嫌中を貫き通すのが良い。ところが、日本貿易振興機構(ジェトロ)が日本の財務省貿易統計と中国の税関統計を基に、21年の日中貿易を双方輸入ベースでみたところ、コロナ禍下でも貿易総額は前年比15.11%増の3914億で、過去最高を更新した。
 わが国の輸出は前年比17.1%増の2062億ドル、輸入は12.9%増の1853億ドルとなった。その結果、わが国の中国に対する貿易収支は209億ドルの黒字と、5年連続の黒字で、黒字幅は前年から7割超拡大し、絶好調である。
 貿易相手国として中国は断然トップで、米国を大きく引き離している。米国がわが国の武器製造を制限し、米国製武器の購入を迫る理由も分からない訳ではない。すでにわが国は中国経済圏に組み込まれている。

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