汚職の常態化。

 時々、メディアを賑わせる公務員の不祥事は後を絶たない。人事院の発表によると、令和元年の国家公務員の懲戒処分者数は296で、種類別の処分をみると、免職26人、停職74人、減給131人、戒告65人だった。
 同年の総務省の発表によると、懲戒処分を受けた地方公務員は4244人を数えた。主な行為別の内訳は、「一般服務違反等関係」 1903人 、「交通事故・交通法規違反」 945人、「公務外非行関係」705人、「監督責任」485人で、処分の内訳は「免職」494人 、「停職」 829人、「減給」1354人 、「戒告」 1567人であった。
 役人の不祥事は増加している訳ではないが、これらの数値は氷山の一角であるのは言うまでもない。贈収賄に相当する接待や贈答は密室で行われる犯罪で、手口も巧妙化しており、発覚する事例は少ない。
 相次ぐ政治家、公務員、企業の汚職・腐敗事件に対して、また公共事業の談合や道路工事は年がら年中で、厳しい批判がある。昔から政官財の癒着・腐敗を断ち切り、国民・住民に信頼される清潔な政治と行政、これを支える公平中立で透明性の高い公務員の在り方が求められている。
 政官財の癒着は東日本大震災復興、オリンピック大会、2025年日本国際博覧会などが典型だが、また省庁別の族議員や「原子力ムラ」「土地改良ムラ」「ITムラ」「感染症ムラ」など利権集団を形成する。
 このように汚職は常態化している。また地方公務員の恣意的な仕事や不公平な行政は住民の信頼を裏切り、役人と聞くとたいていの人は顔を歪めるか、口を閉ざすことから地域を歪曲していることが窺える。
 国家公務員に対する国民の信頼感の欠如は深刻である。各省庁が新しい政策を打ち出しても、その動機は政治家や官僚や企業の利益擁護のためではないかとの疑いの目を向けられる。こうした状況は政府の計画や新しい事業の達成を困難にするだけではなく、必要な行政の業務を妨げ、国の発展や国民の不利益となる。
 また適正で通常のサービスを受けるため、賄賂や接待が必要となれば、公共政策に関わる決定を歪め、公金を腐敗に転用する結果を招く。そうなると、役人は臨時所得を得ようとして住民や企業を食い物にして自分の地位を乱用する。
 元来、省庁も役所も無駄が多く、時代にマッチしない点も多々ある。公共事業、工事、備品の購入など自分の財布から費用を捻出する訳ではなく、固定した業者から高額な価格で購入する。すべてがそうでないとしても、公金の40%ほどは節約できるという見方もできる。
 むろん、汚職を防止する努力は行われてきた。不祥事発生の原因は特定の人に権限が集中し、チェックする体制がなかったという状況や、業務が特定の人にすべて頼って行われていた常態が必ずある。予防対策としてそういった状況を作らないことが基本中の基本である。
 世界の多くの国で役人の収賄行為は犯罪とされ、刑罰を科される。わが国では収賄で有罪になった公務員はほとんどが執行猶予付きの判決で、政治家や役人に対する風当たりが強くなった今でも、執行猶予率は80%以上を保っている。実刑になった事実だけでも、相当に悪質な事件とみなされるが、予防対策として重刑に処するのも一考である。

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