裏金の使途について。

 自由民主党の派閥の政治資金パーティーを巡る事件について、具体的に裏金はどのように使われたのだろうか。裏金は闇の中で動くもので、法律に抵触する部分が多く、その解明は困難である。
 しかし、今回の精力的な捜査で、検察は裏金の使途についても、かなり詳しい情報を掴んだ。それにもかかわらず、記者会見などで国民が知りたい情報を誰もが理解できるような明快な形で公表するようなことはしない。
 裏金は政治的な権力や利益を得る手段として使用したのだろうが、私的に流用し、私腹を肥やした議員も多い。いずれにしても、これらの行為は脱税や買収を含めて法律や倫理に反し、わが国の政治における派閥制度や政治資金規制の問題点が浮き彫りになり、現在国会で論戦中である。
 ここでは政治的な使途について述べるが、まず国会議員は選挙に当選しなければならない。そのため自分の選挙区の県会議員、市会議員など地方議員に裏金を配布し、選挙の際には票を集めてもらう。配布は選挙中や直前だけではなく、地盤を固めるため、常日頃から金銭を配布し、地盤養成活動を行っている。
 要するに地方議員を買収することに尽きるが、この問題は19年7月の参議院選挙を舞台にした河井夫妻選挙違反事件でその一端が分かる。東京地方検察局特別捜査部によると、河井前大臣は妻の案里議員が立候補を表明した3月下旬から8月上旬にかけて、票の取りまとめを依頼した報酬として、地元議員や後援会幹部など100人に2900万円余りを配った。
 この金額は特捜部が立件できる額で、実際は5、6倍が使われたと地元では言われる。自由民主党本部から1億5千万円の選挙資金が河井氏に提供されたことはその証拠の一つとなる。案里議員は初当選を果たしたが、選挙にも多額の費用が使われ、全体には少なくとも2、3億円は下らないとされる。
 裏金は派閥内の賄賂や接待にも使われた。これは自分の人事や政策を取り上げてもらうために、金品や飲食などサービスを提供した。とくに自民党は金権と利権の塊で、大臣や副大臣や党内の役職などの地位を金で買うのも横行していた。
 また見逃してならないのは官僚の接待である。各省庁のキーマンを接待し、裏金を渡して、パイプを作っておけば、選挙区の陳情が通りやすくなる。主な省庁は公共事業や補助金が多い経済産業省、国土交通省、農林水産省、総務省などが対象となり、飲ませ食わせして、渡して窓口を作ってきた。
 むろん、これに足が付くとまずいので、領収書が不要な裏金を使い、政治資金収支報告書にも記載はしない。事業を獲得すれば、請け負った企業から議員に見返りがある政財官の悪のトライアングルである。

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