裏金問題の結末。

 裏金疑獄は政治の腐敗と弊害を浮き彫りにした重大な事件である。与党の自由民主党の派閥の政治資金パーティーを巡って、パーティー券収入のノルマ超過分やキックバック分を、派閥や議員個人の政治資金収支報告書に記載しなかった。自民党の大多数の国会議員が政治資金規正法に違反し、とくに安倍派と二階派が合わせて約8億円もの裏金を作り、一部を自分たちの私的利益に流用したとされる。
 それで、最高検察庁刑事部長の森本氏が直接指揮に当たった東京地方検察局の特別捜査部は、約二カ月間全国から応援検事を集め、50人規模の体制を組んで、捜査に臨んできたが、2024年1月19日一区切りを付けた。
 その結果、通常国会が招集される26日までに、時効や会計責任者と議員の共謀の立証が困難という形式的な結論を出し、実質的な責任の追及は行わなかった。これを受けたメデイアは一斉に最も悪質な安倍派の「5人衆」ら幹部7人を不起訴とする方針だと報じ、両派の会計責任者と、4000万円以上をネコババした安倍派3議員だけが立件される見通しだという。
 その途端、空騒ぎ論が燃え上がり、世間では怒りが沸騰している。矛先が向かっている一つは森本氏に対するもので、特捜部は徹底的にやるつもりだとやる気を見せつけても、見せただけで不発に終わったとする批判が強い。
 今になって振り返ると、この空騒ぎは検察の報道機関へのリークで始まり、それから検察は世間の反応を探りながら、キックバックの金額の情報を小出しに流し、世論の操作をしたが、捜査は一向に進展する様子はなく、最後の最後まで検察の発表で終わった。メディアは大きく騒いだ割に、ほとんど独自の取材はなく、検察の広報係の役割に終始したに過ぎない。
 一般国民と政治家では検察の扱いが全く異なる。これでは国民には裏切りと不公平の悔しい思いしか残らない。検察のこんな不法な主張が通るならば、わが国は本当の民主主義の国と言えるだろうかと疑問を抱かざるを得ない。
 当初から裏金疑惑の政治家は、会計責任者に責任を押し付ける形で口裏合わせをした。検察はメディアをはじめOBや関係者を動員して、政治資金規正法には連座制はなく、主に会計責任者を対象にするもので、限界があると喧伝し、尻込みをしていたと思える。
 しかし、この問題でも起訴はできるが、その他にキックバックだけでも犯罪に該当し、また脱税や裏金による買収などでも起訴が可能ではないか。なぜやらないのかと叱咤激励する人がいる。これを見逃すことは検察の重大なミスであると指摘する政治家や法曹関係者がいる。
 こんな検察では駄目だから、捜査は続けるべきで、通常国会が始まっても、捜査は続行ができるし、逮捕許諾請求で国会議員を逮捕できる。今回に限ってだけ、通常国会前に捜査をあえて打ち切る必要などはなく、立証困難なら、なおさら捜査を続けるべきだと主張する人も多い。
 国民は検察力とやる気に期待したところが大きかったが、単なるガス抜き程度で終わった印象は免れない。これでは国民はとうてい納得できる訳がない。検察が不起訴とするなら、検察審査会に申し立てするか、市民団体などが訴えることになる。
 検察は厳正公平・不偏不党を旨として、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正かつ迅速に適用・実現するという理念を掲げる。しかし、検察庁は独立性が高い組織とは言え、しょせん政府の行政機関の一つで、法務省の管轄下にあり、業務も人事も政府や法務省と連携している。
 現場を担当する特捜部が意気込んでも、その上部には最高検察庁の甲斐検事総長、斎藤次長検事、初の女性の次期検事総長として呼び声が高い東京高等検察庁の畝本検事長、伊藤次席検事などがいる。当然、これらの幹部は政府の人で、政権に協力したり、自民党に迎合したり、政治家に呼応したりする人もいる。
 今回も、検察は政治家や政権に忖度したのだろうか。

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