日中外相会談について。

 2022年4月2日林外相と中国の秦国務委員兼外相は北京で会談した。日中外相会談についてわが政府は成果があったと評価した。その詳細は明らかにされなかったが、日中関係の安定化を目指す方針では一致した点から、親善と関係の強化という点では所期の目的を果たしたと判断できる。
 これ以上のことはなく、これ以下のことない。互いに多くの議論を交わしても、これが林氏の訪中の本当の目的だろう。両国の幹部の交流は19年12月以来3年3カ月ぶりで、昨年22年12月外相に就任した秦氏と対面で会談するのは初めてだった。
 会談は約3時間に及び、秦氏は冒頭で「交流と意思疎通を強め、両国関係を前進させたい」と強調し、日韓関係の悪化を受け、19年以来開かれていない日中韓3カ国の首脳会談の再開に向けて、協力を進める点で一致した。
 現在、成り行きが注目される3月に北京でアステラス製薬社員の日本人男性が中国当局に拘束された問題について抗議し、早期解放を要求した。中国側は法に基づいて処理すると答えたが、具体的にどのような対応を取るのかなど詳細には触れなかった。
 林外相は会談の後中国共産党序列2位の李首相と外交トップに就いた前外相の王党政治局員とも個別に面会した。李氏は「共に関心を持っている問題について議論し、意思疎通と協力を強化していきたい」と強調した。
 大歓迎と言うわけではなかったが、中国側の対応は予想通りで、林氏は肩の荷を下ろしたことだろう。しかし、大国の中国にはわが国などは歯牙にもかけない存在である。それにもかかわらず、花見をしながらぬるま湯に浸かっている政治家、経済界は話せば解る、礼儀をつくせばそれなりに対応してくれると思っているが、常に海千山千の世界を相手にする中国は並の相手ではない。
 最近、中国は世界の期待を背負ってウクライナ和平に動き始めた。しかし、中国が和平の主導権を握ると、米国は盟主としての面目を失う羽目になり、中国の動きを妨害しようとしている。わが国がこれ以上米国の片棒を担ぐのを阻止したい。
 東アジアでは米中対立、これに伴う台湾問題で情勢が緊迫化する中、日中会談が行われたのは、アジアの安定化に多少貢献したと思われる。むろん、平行線で立場の違いが浮き彫りになった点も多くあったが、全く対話がないよりはましである。
 李首相は中国と日本は引っ越しのできない隣国同士で、両国の関係を良好に保つことは、両国とその国民の利益に合致するだけでなく、世界の平和と繁栄にとっても有意義であると指摘した。
 月並みな言葉でも、格別な意味がある。

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