自動車保険料の値上げについて。

 人類社会は絶えず変化し、進化し続ける。しかし、その変化の中には時代の流れにそぐわないものも存在する。その一例として、2024年5月20日に大手損害保険会社4社が一斉に自動車保険料の値上げを予定すると発表したが、将来、自動車保険は大きく形を変えるか、なくなる可能性もある。
 IT化やAI化が社会に広く普及し、企業では全体的に仕事が少なくなり、営業職や社員数はかなり減少している。それにもかかわらず、インフレの世の中で、一斉値上げが連発する中、保険料の引き上げは私たちの生活をより困難にし、経済的な負担が重くなる。インフレが引き起こす結果であるとしても、経営努力で何とか凌いでもらいたいと切に願う。そうでなければ、物価は一斉に値上げに値上げを重ね、限界がなくなってしまう。
 昨今のわが国では、このような野放図な一斉値上げが横行し、無力感と虚無感を感じる。しかし、このまま放っておくわけにはいかず、私たちは消費者として、また市民として、自分たちの声を上げ、インフレと賃金の改善を求める叫びを挙げる必要がある。そして、安全な社会を求め、公正な価格設定を求め、経済的な負担を軽減するために国民的な運動を展開すべきである。
 電気自動車や自動運転が実現しつつある今日、ブレーキサポートなどの安全機能を搭載した車が増えている。それでも交通事故が増加し、自動車保険料の引き上げが行われるというのは驚きである。
 東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険、損害保険ジャパンの4社は、25年1月に値上げをするという。前3社にとっては2年連続の値上げとなる。公表された理由は、コロナ禍が終わり交通事故が増加し、インフレによって材料費や人件費が上昇したことで、自動車保険の収益性が悪化したというものだ。
 しかし、これらの理由が本当に妥当なのか疑問に思う。3社が発表した24年3月期連結決算では、円安を追い風に海外事業の収益が伸び、保有株式の売却も利益を押し上げ、いずれも過去最高を記録した。
 東京海上は前年比85.7%増加の6958億円、三井住友海上は75.0%増加の3692億円、損害保険は約16倍の4160億円の純利益を上げた。これほどの利益があるにもかかわらず、値上げが行われるとは理解に苦しむ。
 一方、交通事故の発生件数は12年66万5000件、死亡者4400人だった。この10年間で事故件数は半減し、22年は30万件、死亡者は2600人、23年は30万8000件、死亡者は2700人となった。事故の件数が上がれば保険料が上がり、下がっても保険料は上がるというのは、信頼を揺るがすものである。
 これらの事実を考えると、自動車保険料の値上げは、消費者にとっては理解しがたい。事故発生件数や死亡者数が減少傾向にある一方で、保険会社の純利益は増加している。消費者の視点から見れば、不公平感を思わざるを得ない。

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