世界の債務について。

 2024年6月4日、国際連合貿易開発会議(UNCTAD)は、世界全体の公的債務が23年に約97兆ドル(約1京5千兆円)に達したという報告書を発表した。UNCTADは発展途上国の経済開発促進と経済格差の是正のために国際連合が設けた機関である。事務局はスイスのジュネーヴに設置され、4年に1回開催される。
 1964年に設立された同会議には194カ国が加盟する。具体的には国際的な経済問題について討議し、貿易と開発、金融、投資、技術、持続可能な開発など総合的に対応する。主な目標は開発途上国や経済移行国の開発、貧困の低減、世界経済への統合などの原動力として貿易と投資を利用できるようにし、その成果を提言する。
 世界の公的債務は前年に比べて5兆6千億ドルも増加した。これは国際経済の活動の指標の一つとなるが、これほど莫大な金額を突きつけられても、実感が湧かない。しかし、先進国と言われるわが国の公的債務は10兆6320億ドルに上り、全体の約1割を占めるが、対外債務はない。
 報告書によると、公的債務全体の約3割に当たる約29兆ドルは途上国が背負っており、中国やインド、ブラジルなどの債務額が大きい。これらの国は人口規模も大きく、経済的にも発展しつつあり、懸念はないかもしれない。しかし、利息の負担が重く、経済の脆弱性があり、経済発展に対する影響がある。
 途上国の債務問題については債務の返済額が大きく、不釣り合いな負担となっている。そして、利息の支払いが急速に増加し、国の予算が制限される。現在、途上国の半数が政府の歳入の最低でも8%を債務の返却に回し、過去10年で2倍の数値になった。
 23年には過去最高の54カ国の途上国(主にアフリカ諸国)が、最低でも政府資金の10%を債務の利息の支払いに充てた。一部の国では利息の支払いが教育や保健衛生などの分野への歳出を上回る例も見られた。
 アフリカの経済状況はこの20年間経済成長がほとんどなく、人口は倍増した。そのため1人当たりのGDPはおよそ半分にまで低下し、長期にわたって深刻な貧困化が起きている。
 アフリカ諸国ではGDPに対する債務額の比率が高くなった。具体的には13年から23年の10年間で、債務対GDPの比率が60%以上の国の数が、6カ国から27カ国へと大幅に増加した。
 また同年途上国は8470億ドルの純利息を支払い、21年から26%も増えた。これらの国は米国の2倍から4倍、ドイツの6倍から12倍の利率で、国際的に借り入れを行っている。
 公的債務の増加は、世界経済にとっても深刻な問題であり、各国がこの問題に対応するための適切な対策を講じる必要がある。このような状況を受けて、UNCTADは各国が公的債務の増加に対応する対策を強く求めている。

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