止まらない円安について。

 この10年ほど円安の基調が続いているが、22年3月からウクライナ戦争と米国の金利上昇策などが原因で加速した。庶民には円安も円高も余り関係ないが、円安になると、輸入品の価格が上昇し、そのために物価も高くなる。そう聞くと、円安は困ると思うが、私たちには適正な相場など分かる訳がない。
 この責任すべてが日本銀行にあるかどうかは知る由もないが、白川氏が総裁だった08〜13年は円高の傾向にあった。11年の東日本大震災の時も円高が止まらなかったが、10月には史上最高値となる1ドル75円まで円高となった。
 13年4月に安陪首相と黒田総裁による超金融緩和政策によって、14年には1ドル106円と円安が進んだ。21年110円、22年131円、23年140円、現在は160円を超えている。10年前と比べると、50%以上も円が値下がりした。
 その主な原因はわが国と米国の金利差だと言われるが、それだけではない。日米両国とも、長らく金融緩和政策をとってきたが、米国は22年3月に金融引き締めに転換した。日米の金利差が開き始め、投資家の間で円を売ってドルを買う動きが強まった。現在のわが国の金利は1.0%で、米国は5.3%である。
 今後の予想として、今年の末に1ドル120円の円高になるとする楽観論がある。その理由として、今日のわが国はポジティブではなくてネガティブな状況にある。そういった保証は全くなくても、それがニュートラルに変わると、世の中が安定し、為替も安定し、再び円高に戻るという訳の分からない理由がある。 
 7月4日経済同友会の新浪代表幹事は、「これは円安ではなく、超円安になっている」といきり立ち、「超緩和金融政策の弊害だ」と指摘した。納得できる理由の一つで、130円から140円が適正との考えを示したうえで、「もっともっと金利を上げるんだというメッセージを早急に出す必要がある」と政府と日銀に注文をつけた。
 一方、1ドル230円まで円が安くなるだろうとする悲観的な声もある。現状ではこちらの方が現実味と真実味を帯びてきそうだ。円安の理由として日米の金利差を挙げる金融関係者が圧倒的に多い、確かにそれも重要であるが、円安の現象は経済力の低下を示唆するというのが本当のところだろう。
 この30年構造的な問題によってわが国の経済の底力がかなり低下したと指摘する実業家が多い。例えば日米を比べても、新しい技術がヒット製品として出なかった、一方米国は著しく進化し、これからも進化する。さらに成長する経済力を秘めているかどうか、こういったことが一番の課題のようだ。

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