伊方原発3号機と地震について。

 2024年3月7日、大分地方裁判所は愛媛県の伊方原子力発電所3号機について、対岸約50キロ離れた大分県の住民が運転の差し止めを四国電力に求めた裁判で、住民側の請求を棄却した。
 伊方原発3号機は愛媛県の南予地方の伊方町(人口:約7500人)にある四国電力唯一の原発で、1994年に運転を開始した。2011年4月東日本大震災と福島第一原発事故による定期検査で運転を停止した。その後国の新規制基準に適合すると認められ、22年1月から運転を再開した。1号機と2号機についてはそれぞれ1977年9月、1982年3月に稼働したが、16年3月と18年5月に廃炉となった。
 この裁判は伊方原発から対岸50キロ以内に住む大分県の住民569人が、原発の安全性が不十分であるとして、四国電力に対して運転の差し止めを求めた。住民側は地震や火山噴火などの自然災害やテロなどの人災によって原発が事故を起こす可能性が高いと主張し、また事故が起きた場合大分県内にも放射性物質が拡散し、住民の生命や健康に重大な被害を及ぼすと訴えた。
 一方、四国電力は3号機は厳しい審査をクリアして安全性が確認されており、住民側が指摘するリスクは極めて低いと反論した。また住民側は伊方原発から遠く離れており、直接的な被害を受ける可能性はないとして、訴える資格がないと主張した。
 大分地裁は3号機が新規制基準に適合しており、安全性は十分に担保されていると判断した。また住民側が危惧した自然災害や人災のリスクは極めて低く、事故が起きた場合も大分県内への影響は軽微であると評価した。さらに住民側は伊方原発から50キロ以上離れており、被害を受ける可能性はほとんどないとして、訴える資格も否定した。
 この判決に対して、住民側は控訴する意向を示したが、四国電力は判決を受け入れると
表明した。住民側の差し止め要求はかなり無理のある内容で、棄却は妥当だと見る向きが多い。
 原発賛成派は再稼働を促すべしと意気盛んである。しかし、東日本大震災、能登半島地震でも見られたように、わが国では予想外の地震が発生する。断層の大規模なものを一般的に「構造線」と呼んでいる。
 わが国には世界第一級の大断層が存在し、九州の八代から、徳島、伊勢をへて諏訪の南を通り、群馬県の下仁田、埼玉県の寄居付近までも陸地を1000キロ以上追跡できる、中央構造線と言われる大断層がある。
 とくに近畿南部から四国にかけて、中央構造線に沿って、約360キロに及ぶ活動度の高い活断層が存在し、M7を超える地震が発生すると考えられている。今日、明日ではないとしても、伊方原発はいつ震度7を引き起こしてもおかしくない構造線沿いにある。この理由だけでも、四国電力は早急に3号機を廃炉にする必要がある。
 1996年、高知大学などの研究チームは、伊予灘海底の中央構造線断層帯の調査によって、愛媛県の伊方原子力発電所の間近の海底に活動度の高い活断層2本を発見した。ここでは約2000年おきにM7前後の地震が起きると考えられている。
 また原発と活断層との距離は約6キロで、活断層調査にあたった高知大教授・岡村によれば、もし伊方原発に最も近い活断層で、あるいは中央構造線断層帯全体が一度に動いて、予想される最大規模のM8の地震が起きた場合、原発周辺は震度7の揺れに見舞われる可能性があるという
 17年7月松山地裁は、国の安全審査が不適切だと主張する地元住民の3号機の原子炉設置許可を無効にする訴えを棄却した。しかし、裁判所は活断層に関する国の安全審査の結果に疑問があると指摘した。

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