有事、有事と言うが。

 2023年9月15日、米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は記者会見で、8月の日米韓首脳会談で合意した「有事協議」を日韓の安保担当高官と初めて実施したと公表した。
 13日に行われたロシアと北朝鮮の首脳会談を受けて、北朝鮮からロシアへの兵器供与計画についての対応などを協議した。この有事協議とは朝鮮による挑発や緊張が高まった場合に日米韓が連携して対処するための協議体制である。単なる協議で終われば良いが、ここから朝鮮有事が生まれる可能性が高い。
 現在でも韓国と朝鮮は38度線の軍事境界線を挟んで対峙しており、今は休戦中でも戦争中である。こういったことからも、韓国が戦争中なら、自然にわが国も朝鮮と戦争中となり、「わが国の有事」である。そうなると、さらに国防費と軍備の拡大を余儀なくされる。
 この2、3年間「台湾有事」が大きく取り上げられ、いかにも中国の台湾侵攻が間近に迫っているという演出が行なわれてきた。それが今年になると、メディアはほとんど取り上げなくなった。
 事の発端は安倍総理がトランプ大統領との密約で防衛費2倍を決めたことにある。その結果、米国政府の武器輸出制度(FMS)に基づいて、わが国は原価の2,3倍とも言われる高額で兵器を買い続けることになり、防衛費が大幅に不足した。
 21年9月安部氏の支援を受けた高市氏は、自由民主党総裁選挙で防衛費倍増を声高に叫んだ。22年7月8日安部氏は選挙演説中に凶弾に倒れた。11日タイ訪問中のブリンケン国務長官は安倍・元総理大臣に哀悼の意を表すため来日したが、実は岸田首相にトランプ氏との密約の履行を迫り、日米の安全保障体制を確認した。
22年12月岸田首相は新しい国家安全保障戦略、国家防衛戦略および防衛力整備計画のいわゆる「戦略3文書」を決定し、防衛費の大幅増額を打ち出した。すると、即座にブリンケン国務長官は中国に飛び、習主席と会談し、「台湾の独立は指示しない」とこれまでの方針を述べた。これで台湾有事は霧散した。
 それまでの2年間可能性は極めて低いにもかかわらず、米国の軍産複合体とこれに群がるネオコン(新保守主義者)とシンクタンクは台湾有事を盛り上げ、わが国の世論に訴えた。そのさえたるものが、22年8月米国下院議長のペロシ氏が台湾を訪問し、蔡・総統と会談を行ったことである。
 これに反発した中国は、台湾を取り囲むような形で軍事演習を開始し、軍用機を台湾の防空識別圏に侵入させたり、わが国のEEZ(排他的経済水域)内にミサイル5発を打ち込んだりした。
 中国の威嚇行為は頂点に達した。今にも米中衝突かと固唾を呑んで見守ったが、派手な口喧嘩はしても、両国は全く戦争などする気はなかった。ウクライナ情勢もあって、今度は「朝鮮有事」で盛り上がりそうだ。

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