防衛費の問題が喧しい。

 といっても、国防をどうするかという原点の議論ではなく、防衛費倍増の予算をどう工面するのか、これが問題で国民の暮らしに直結する話ではない。国債の発行、一般予算からの増額、復興特別所得税、たばこ税の流用、法人税、所得税、市町村税、消費税の増税、国の一般予算の1.5倍以上とされる特別予算からの補填など様々な財源がある。
 いずれの方法を採用しても、国民の負担は重くなり、最悪の場合は来年4月の地方統一選挙後いきなり消費税増税の可能性もある。国民としてこれ以上の増税なんて、とうてい承服できない。
 今回の議論で再認識した問題だが、平成23(2011)年12月に東日本大震災の復興の理由で設置された復興特別所得税および復興特別法人税は、後者は2年間で終わった。その後は復興特別所得税に引き継がれ、個人は所得税の2.1%を令和19(2037)年まで支払い続ける決まりがある。これにも国民はかなり頭にきているが、20年間延長する案が出ている。
 そもそも3年の長期にわたるコロナ禍、ウクライナ戦争、これらに伴う世界的な大不況、国内外ともに未曾有の難事に直面し、人びとは困窮の中にある。それにもかかわらず、岸田首相は余計なことばかりで、国民の窮状には関心がないようだ。
 国防費倍増論は安部元首相の遺産であるにしても、岸田首相はこの非常時に所得倍増から変更した資産倍増と利権の塊である原子力発電推進を前面に押し出すのは狂気の沙汰としか言いようがない。これらに対しては国民の反対が多く、与党内でも怒号が飛び交い、分裂しそうな勢いが強まっている。
 防衛費の増額は倍安部氏と米国前大統領トランプ氏との話し合いで決めたようで、わが国は兵器企業から直接ではなく、米国政府を通して武器を購入する約束をした。米国は武器商人化し、中抜きも好き放題である。
 そのため安部元首相が7月8日に亡くなった後、ブリンケン国務長官が11日に急遽来日した。追悼はそこそこで、実は岸田首相に防衛費倍増の話に釘を刺しに来たのが本当のところだろう。
 そこでメディアは台湾問題、台湾有事、敵基地攻撃、日米協力などと盛んに好戦気分を盛り上げ、首相も防衛費増額を頻りに打ち出している。しかし、防衛費の増額は必要に応じて対応するもので、必ずしも米国の要求通りにすることはなく、今は時期も悪い。また原発は推進ではなく、風力発電と太陽光発電の増強を急ぐ。

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