札幌五輪招致は断念。

 1972年に冬季五輪を開催した札幌市は、2030年冬季五輪・パラリンピックの開催を目指していたが、10月11日に招致を断念したと発表した。34年大会以降の開催を目標とする方針で、招致活動は白紙にことになり、秋元市長が日本オリンピック委員会(JOC)の山下会長と東京都内で会談し、最終確認を行った。
 招致断念の理由は東京2020大会で発覚した汚職・談合事件の影響で、国内外のオリンピックへの信頼が失われ、開催支持率が低迷したことが大きな要因である。また当初は26年に開催を狙っていたが、地元関係者の合意が得られずに撤退した経緯があり、北海道新幹線の札幌延伸開業が30年度末とされながらも、遅れる可能性が高く、先送り論が高まっていた。
 東京五輪では、前会長の竹田氏がアフリカの元陸上競技連盟会長と共謀し、国際オリンピック委員会(IOC)の委員に賄賂を渡して東京の招致に有利に働かせた疑いや、当初7300億円の予算が4兆円にも膨れ上がり、スポンサーを含んだ談合や汚職事件が明らかになった。
 これらのスキャンダルは国際的な批判を浴び、わが国はオリンピック開催国としての信用を大きく損ねた。IOCもわが国でのオリンピック開催を見限ったようで、当面オリンピックの開催は難しい。
 オリンピックは本来、スポーツを通して人々に教育的価値や普遍的・基本的・倫理的原則を広め、人々の生き方を高めるための祭典である。しかし、84年ロサンゼルス大会以降、商業主義が加速し、誘致活動や大会運営に金銭や利権が絡むようになった。
 現在のIOCの収入構造は47%が放送権料で、45%がスポンサーからの協賛金であり、あまりにも商業主義と選手のプロ化が行き過ぎている。この収入の90%は大会組織委員会や各国オリンピック委員会、各競技団体に配布する形で、大会を運営するが、ここでも不正や不透明な取引が行われている可能性もある。
 関係者はどこまで現実が見えているかは分からないが、五輪もワールドカップも万博も、金儲けになることを招致の大義名分にする。ある程度のスポーツの振興や地域活性化、観光振興につながるが、膨大な経費の割には期待したほどの効果は上がらない。近年、世界では招致を断念する都市も多い。
 今回はオリンピックの未来について、改めて考える絶好の機会となる。

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