零細企業の倒産、廃業について。

 30年に及ぶ経済の低迷に加え、3年以上も継続するコロナ禍とウクライナ戦争の継続は景気の冷え込みに追い打ちをかけている。原油高や円安を背景に材料費が高騰し、売上げが減少し、コロナ融資の返済が本格化する中で、経営が圧迫される中小あるいは零細の企業が多い。
 最近、とくに町中の零細企業の倒産や廃業が目立ち、密かに消えていく。メディアは後継者がいない、人手不足と盛んに報道するが、実際には利益が薄いからである。倒産の理由はコロナ禍やウクライナ戦争の影響もあるが、最も多いのは物価高と人口減少による販売不振と推察される。
 この問題は調査によっても証明されているが、倒産の理由の第1位は販売不振が71%を占め、2位はこれまでの経営のしわよせの10%、3位は連鎖倒産6%、4位は過少資本と放漫経営がそれぞれ5%の順で、いかに経営の存続には売上げが重要であるかが分かる。
 販売不振は市場の縮小、景気の悪化、大手企業の新規参入による価格競争などの理由が多い。他方では経営者の新規顧客の開拓、サービス、品質の向上心の欠如などといった要因も大きい。
 当然、時代を読む力も必要だが、どんな時でも良品で適正な価格の製品や商品は、売れ行きの減少は少ない。しかし、現状は小売業者であれば客数や購入数が減少し、リピーターが集まらない。できるかぎり良品を仕入れ、店頭に並べるしかない。
 農業などでは生産調整が行われ、汗水垂らして生産に励んでも、赤字構造のため廃業に追い込まれ、タクシー運転手や作業員など他業へ転職した人もいる。製造業では大企業が自社生産するようになり、下請けに回る仕事が少なくなり、三次下請け、四次下請けの小・零細企業の仕事は先細りになった。
 また大工、左官、とび職、襖屋などの建築関係の専門職も、工法や仕様などが様変わりした。省力化も進み、専門的な仕事は不要となる傾向で、10年ほど前に多くの一人親方は廃業を余儀なくされた。
 現在、流通業界では24年の超過勤務時間が一段と厳しくなり、運転手不足が注目を浴びている。最終的にはどう決着するか分からないが、業界は置き配、物流センターの設置、鉄道輸送の復活、大型フェリーの運航、トラックの自動運転とドローンによる配送などの活用で補おうとする。これらが軌道に乗ると、運転手の過剰は必然となりそうだ。
 同族経営やワンマン社長が経営する会社は、放漫経営に陥りやすく、不適切な経営やずさんな経理を行い、資金などを私物化する。借金が雪だるま式に増え、気がつかないうちに倒産する結果を招く。
 狭い世界の中で、見聞した幾つかの事例を並べたに過ぎないが、倒産を防ぐには内部留保の確保が最も大切である。また行き当たりばったりの経営でなく、計画的な事業を推進し、新しい事業への転換、新市場への参入、不採算事業から撤退などの決断も必要であろう。

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