円安について。

 2024年3月27日の東京外国為替市場における円相場は、一時1ドル152円に迫り、1990年7月以来、33年8か月ぶりに円安は高水準となった。この動きは3月19日に日本銀行が大規模な金融緩和とマイナス金利政策を解除する決定をしたことから、本来は円高に向かうところだが、当分の間緩和的な金融環境が続くと見られ、徐々に円安ドル高が進んでいた。
 財務省の神田財務官は25日午前、円安が進んでいることに関して、経済のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に沿っておらず、投機による明らかな影響によると見解を示した。そして、投機による過度な為替相場の変動が経済に悪影響をもたらすとの懸念から、常に準備はできていると述べ、介入も辞さない姿勢を明確にした。
 為替相場が変動するのは通貨の需給関係で決まるが、通常その要因は主に金利、物価、国際収支、戦争や紛争、中央銀行の為替介入の5点である。投機による過度な変動は市場の安定性を損ない、輸出入企業の利益を圧迫したり、インフレやデフレを引き起こしたりして、経済に影響を与える。
 中央銀行は為替レートを管理するため、外国為替市場で自国通貨を売ったり、買ったりする市場介入によって、為替レートの調整を行う。日銀は自国通貨を購入し、円の価値を上げる。
 日銀が円を買う場合、現在の外貨準備が使われる。23年3月末の外貨準備高は約170兆円を保有するが、1年前に比べると、7.3%減少した。ただし、すぐに介入資金として、使用ができる海外の中央銀行や国際決済銀行(BIS)などへの預金は約19兆円に留まる。他の資産や米国債などを売却して介入資金にするのは、国際協調の観点からハードルが高い。
 その後一時わずかに円高になったが、残念ながら、円安の動きは根強く、現在は151円台で推移する。日銀はマイナス金利の解除に踏み切ったが、引き続き金融緩和のスタンスを維持する方針を示し、短期金利は0.01%の低金利に設定した。
 日銀は今後の追加の利上げには慎重な姿勢をとると予想される。日本と米国の金利差が縮小する状況ではなく、結果的に為替市場ではドルを買い、円を売る傾向が強い。また外国の投資家はこの状況を歓迎していることから、介入操作を行っても、なかなか円高には戻らない。
 円安のメリットは過去に比べると減っており、円安でもそれほど輸出数量が増える訳ではなく、輸入物価の上昇に伴う実質賃金の下落や輸入原料に頼る企業に対しては悪影響となる。
 したがって、市場介入は一時的な効果しかない。やはり、長期の経済の健全性は、基本的な経済政策によって決まる。それには景気を盛り上げるか、利子を引き上げるのが不可欠である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?