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俺たちのエイデン・ピアースが帰ってきた Watch Dogs: Legion DLC BLOODLINE 感想

※シリーズのネタバレモリモリです
いや~~大団円でしたね!!エイデン・ピアースの物語が大きな区切りを迎え、無印がリリースされた2014年以降プレイヤーが抱えてきたもやもやにもしっかり応えてくれるストーリーだったと思います。


思えば無印のエイデンさんはそりゃあひどいおっさんでした。遠目で見るとよくあるダークヒーローですがそのメンタリティたるやとても不惑の大人のそれとは思えません。
高級ホテルで金持ち相手に窃盗ウマウマ中にマジもんのヤバい奴の秘密に触れてしまい(しかも先方の勘違い)その報復の巻き添えで姪っ子を喪い復讐の鬼と化す……あとついでに他の犯罪者も許さん!!……ってそもそもの原因お前自身やんけ!!自分の落ち度を自覚しているような描写はあるものの、その怒りはシカゴの裏社会を牛耳るラッキー・クインをはじめとした犯罪者全般に向けられ、死に急いでいるかのように無茶苦茶なビジランテ活動の末、シカゴはインフラをハックされてボロッボロ、雇っていたフィクサーからは裏切られ、元相棒兼師匠とは最後までわかりあえずに殺し合う……という超絶にがにがビターEDを迎えました。
協力者として登場するレイモンド・ケニーは警告の為のインフラハックの結果11人もの人々を死なせてしまった過去を持ちますが、同作DLCのBAD BLOODで自らの行為について「こんなことをして申し訳なかった」とはっきり謝罪しています。更に遺族の何人かから赦しを得るような描写もあり、エイデンさんとは対照的な描かれ方をしていたのが印象に残ります。
作風がすっかり明るくなってプレイヤーを面食らわせた2にも我らがフォックスはちらりと登場しますが、相も変わらず破滅的なヒーロー活動で犯罪組織を元気に壊滅させており微笑ましいかぎりです。
そんな他罰的かつ自己破壊的なエイデンさんが十数年の時を経て自分の罪と家族に向き合うストーリー……がまさかLegionのDLCで見られるとは!!
エイデンさんが昏睡状態に陥った際に精神世界がねっとり描かれているのが良かったと思います。ありがとうブロカ・テック、ありがとうスカイ・ラーセン。そこで対話するエイデンさんの姿は無印の頃のような若い姿です。姪っ子を死なせてしまった後悔から彼の時間は止まってしまったんですね。楽しい思い出も辛く苦しい思い出も両方が詰まったかつてのピアース家は美しくかつグロテスクに描写されます。精神世界のニッキーが責め立ててくるのもなかなかに堪えます。現実の彼女はエイデンさんのせいで娘が死んでいるにもかかわらず寧ろ兄を思いやるようなド聖人ですが、エイデンさんとしてはいっそ発狂して責め立ててくれた方が楽だったのでしょう。もうなにもかもがつらい。
「俺は取り返しがつかないほど罪と間違いを犯してきた」と目覚めることを拒否するエイデンさんにジャクソンは「ただ家族として一緒にいてほしいだけだ」「あんたは、僕のおじさんだ」と必死で語りかけます。説得の末、フォックスとして象徴的なアイテム「携帯電話」「帽子」「コート」を「埋葬」しただの家族として現実世界へと戻っていく叔父さんと甥っ子……めっちゃ泣ける演出じゃないですか!!
エイデンさんがこういった心情に至るためには十数年の歳月と待っていてくれる家族が必要だったのでしょう。願わくは彼の残りの人生が穏やかなものであらんことを。
あ、ただエイデンさんを昏睡状態から救うためにスカイ・ラーセンの手を借りることになった時は正直(終わった……)と思いました。ピアース一家揃ってハウスキーピングAIになる未来がはっきり見えましたね。まさか真っ当に助けてくれるとは……。ありがとうブロカ・テック、ありがとうスカイ・ラーセン。

変わったといえばジョルディ・チンもかなりのものです。
無印では何を考えているのか読めないチェシャ猫のように振る舞い、2ではお気に入りのエイデンさん相手ではないためか隠しきれない暴力性が強調され、いずれにしても積極的にお近づきになりたいタイプではありませんでした。
それが本DLCではうってかわって「数年に一度会う何やってるかわからない親戚のおじさん」レベルの気さくさです。多額のお小遣いとかくれそう。
ジョルディ自身がボケに回るタイプなので更にボケ倒すレンチは相性が悪かったのかも知れませんがそれにしたってまるくなりすぎでしょ。ホイホイ依頼人の情報漏らしたり仕事内容を妥協したり無印で見せたプロフェッショナリズムはどうした!?そういえば無印では割と最悪な別れ方をしたはずのエイデンさんとはお互い名前呼びで旧来の友のように接し、実際彼の身を案じて声を荒らげるなどかなり人間味が増しています。いやあ……年月は人を変えるんですね。

といった感じで無印が好きで良かったと思えるめちゃくちゃ楽しいDLCでした。

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