見出し画像

復刻版! Djentlemen入門に捧ぐアルバム名盤10選【Metal】

まえおき

この記事の本編は、某所にアップロードしていた記事の移設です。

画像1

場末な割に7年そこそこでいい感じにご愛顧いただいた様で。

最近はDjentという単語で調べものをしなくなったのでアレですが、そういう音自体は変わらずずっと好きだったりします。
持論ながら、Babymetalが悪夢の輪舞曲を収録した2014年時点でバンドのアイデンティティとしてのDjentは適切に陳腐化し寿命を終えたという認識。ひとつのテクニックとして普及しきったというか。

では逆に、Djentがサブジャンルとして、バンドのアイデンティティとして存在感のあった時期はどうだったんだ、というのが窺い知れるのがこの記事です。2012年の末。「役者の揃った時期」という印象です。それではどうぞ(リンク修整を除き、基本的に本文そのままでお送りします)

・・・

Hello Djentlemen :)

2003年ぐらいでしょうか。アンダーグラウンドでひっそりと産声を上げたメタルのサブジャンル:Djent。2012年、その代表格であるバンドPeripheryの2ndアルバム発売と共に、日本でもこの単語を目にする機会が増えてきました。

本まとめは、最近になってこの名前を知り、掘り下げたいと思っている方が対象です。ちなみに、旧譜重視のチョイスがテーマです。新譜を追いかけるのはニュースサイトにおまかせです。

(編集注:当時記事内で紹介していたポータルサイト https://got-djent.com/ は2020年現在閉鎖しています)

音楽性の共通点は『奇妙なグルーヴを宿したリフ』です。

専門用語的には『シンコペーション』『変拍子』を多用したリフ捌き、
「やたらひっかかってヘドバンしにくいよ!」
「やたらねばっこくてヘドバンしにくいよ!」というのが特徴です。
ちなみに『Djent』の語源は擬音語であり、多弦ギターのパームミュートによる低音の刻み≪じぇんっ≫という物が由来なので、7弦・8弦ギターの使用者が非常に多い界隈でもあります。

それでは前置きが長くなってまいりましたし、

始めましょうか。これだけ聴いときゃDjentlemen名乗れるんじゃね?な名盤たち、入場です!
あ、ちなみに本まとめは拙ブログの宣伝を兼ねたものであり、自前のエントリをガンガン使用します。ご了承ください。

1枚目:Meshuggah ♪「Chaosphere」

「スウェーデンの誇るテクニカルスラッシュの重鎮」Meshuggahによる1998年作の3rd。
これまでの「変拍子をやたら使いたがるメタリカ」の様な印象から、そのコアなリズムセンスを全開にさせてしまった狂気の作品としてカルト的人気を誇る一枚。

当時は「ただただ異端。誰もマネしないよこんな音楽・・・」とか言われていた彼らです。が、マネし始めたバンドが10年越しで活躍し始め、今のDjentというシーンを作ってしまいました。
「DjentとはMeshuggahフォロワーによるシーンである」という説を支持する筆者なので、生みの親たるこの一枚は外せません。

特に、この一曲。このギターの「刻み」が、Djentの源流でございます。
・・・おバカ極まりない、お笑い的にも伝説のMV。
アルバム内では他にも、#1「Corridor Of Chameleons」、#5「The Mouth Licking What You've Bled」などなどアグレッシヴに引っかかりまくるリフと粗暴なシャウト、サイケなソロが交錯するバンド屈指の激烈アルバム。

ちなみにこの後、彼らはドゥームの色を強めたり民族音楽的な佇まいを導入したりと、唯我独尊の道を突き進みますが、リズムに対する謎のこだわりはきっちり守ってます。
2012年の最新作「Koloss」もやはりオススメですが、それはまた、別の話。

2枚目:Periphery ♪「Periphery」

冒頭でちらっとご紹介したPeripheryのデビューアルバムです。最新作(編集注:2ndアルバム「Periphery II」)も良いですがあちらは僅かに"脱Djent"的な動きも見られます。結果、一般的には2ndの方が評価高め、Djent狂信者にはコチラ1stの方が評価高めな印象です。ソース提示出来ないのであくまで印象ですが・・・。

発売当時のレビューはコチラ。

水も滴る良いMV。この冷たくて清涼感のある質感も今作の大きな魅力です。

余談になりますが、Ex-Peripheryのヴォーカルが現在在籍しているバンド:Ever Forthrightも要チェック。こちらでは彼、Saxも吹いてます。

3枚目:Animals As Leaders ♪「Animals As Leaders」

先日Between The Buried And Meと来日した彼らによる、2009年デビュー作。フュージョンとメタルが正面からぶつかり合う、超絶テクニカルなギターインスト作品です。

同じく、拙ブログによるレビュー文。特に、フュージョンとのクロスオーヴァー要素は後続のバンドに大きく影響しています。

01:10分辺りから始まるタッピングリフの難解なリズムに鳥肌。全体を通すと、例の「奇妙なグルーヴ」よりも、超絶テクニカルなフレーズの方が目玉になっている印象も。・・・という所もあり、彼らを出発点に「Djent=8弦ギター使った低音から高音まで暴れまわるテクニカルメタル」という考え方も生まれてきます。

繰り返しになりますが、Djentという世界はMeshuggahへの愛、特に、ギタリストFredrik Thordendal氏への愛が出発点になっています。
そしてAnimals As LeadersもギタリストTosin Abasi氏によるソロプロジェクトが発端。彼らのカリスマが手伝ってか、Djent界隈にはインスト作品が一定の市民権を得てたりもします。

4枚目:Fellsilent ♪「Hidden Words」

イギリスのツインVo.メタルによる2009年作。スリリングなヴォーカルの掛け合いと例の特徴的なリフ、スクリーモ由来の激しい緩急が魅力です。

こちらの記事内でも言及していますが、ヴォーカルスタイルとしてSikthの名前を連想する所もミソです。Sikthは音楽性の幅が広く今回の選出には入れていませんが、Djentシーンへの影響が強いバンドのひとつです。

幻想的なフレーズと神経質な刻み、全ての畳み掛ける勢いがアツい。メロディーの良さも特筆したい。
さて、彼らはこのアルバム発表後に解散してしまいます。その後のれん分けの様な形で、
・Gt.Acle Kahney氏によるTesseracT
・Gt.John Browne氏(今もフロントマン)とVo.Neema Askari氏(既に脱退)によるMonuments
と、現在もこの音はそれぞれに引き継がれています。詳しくは後述。

5枚目:TesseracT ♪「One」

デビューEP:「Concealing Fate」に5曲を追加した、2011年フル作。

彼らの音楽性は、Fellsilentに比べると穏やかで幻想的な物。前述の曲「Immerse」におけるイントロの雰囲気を増幅させた様な音像を主軸にしています。先程まではスラッシュやメタルコア由来の激しさMAXの音が目立ちましたが、彼らは一転、ミニマルロックやポストメタルの様な深く優しい佇まいが魅力。

彼らのプログレッシヴな魅力を伝えるために敢えてこの動画をチョイスしましょう。EP6曲をフルで演奏したスタジオライヴ映像っ!!

6枚目:Monuments ♪「Gnosis」

Fellsilentのれん分け、お次は彼らの2012年作1stフルです。ヴォーカル交代も経ており、バンド結成からリリースまでかなりの時間がかかってしまいましたが待った甲斐のある傑作。

現在のメタルコアど真ん中!なヴォーカルスタイルに、シーン随一のズバズバ切れるスラッシュリフが絡む。
古参という事もあり、音楽性的にはPeripheryと並列に語られる機会が多い彼ら。スクリーモからメタルコアを順に追っかけてきたファンに、一番ぐっと来る音像かと思います。

・・・ちなみに、ヴォーカル交代前はラップコア・ミクスチャーの様なスタイルで、これはこれで非常に稀有でありました。

7枚目:Born Of Osiris ♪「The Discovery」

基本的には、テクニカルデス・デスコアのバンドとして紹介される機会の多い、Key.含む6人組による2011年作3rd。
彼らも2003年結成当初からMeshuggahからの影響を見せており、Peripheryとも同レーベルSumerian Record所属という事もあってDjentと呼ばれるシーンに影響を与えている存在になっています。

丁寧なステキレビューがありますのでコチラをご紹介。
「多分、MESHUGGAHが苦手な人でもこのバンドなら楽しく聴けるんじゃないかな。」のコメントがミソですね。影響を強く受けつつも、全体像は大きく違った所に落とし込んでいる。ただのフォロワーじゃないぜ、という所であります。

イントロのリフが耳を引く一方で、サビ(?)で飛び出す「てってけてー♪」なギターフレーズの存在感も異常。

彼らの存在は地味に重要でして、
・スクリーモからの延長線上にあるバンド群
・フュージョンとの融合を進めるバンド群
・Meshuggah原理主義(?)的な、重く暗いドゥーミー・スラッシーな要素を打ち出すバンド群
これらとは別の
・エクストリームな激しさを追求するテクニカルデスからのアプローチ
という選択肢をシーンに提示してくれています。おかげで細分化が進んでわりと混乱するんですけどね!

余談ですが、テクデス要素の強いDjentとして追加で強くお勧めしたいThe Haarp Machine。

8枚目:Uneven Structure ♪「8」

先程ちらっと言及した、「Meshuggah原理主義(?)」な音として、彼らをご紹介しましょう。2009年に発表されたフリーEPです。2012年12月現在も無料配布なので、↑のリンクからゲットしちゃいましょう。
(編集注:このアルバムは2013年に録り直され、別途BasickRecordsからリリースされています。 https://basickrecords.bandcamp.com/album/8 )

こちらも良い記事がありましたのでご紹介。

Meshuggahラヴなリフが特に光る一曲。
今作については、2分ちょっとの短い曲が次々と繰り出されるのも特徴的です。
TesseracTにも通じる幻想的なクリーントーンも綺麗ですが、やはりMeshuggahに通じるズシリとハラに来る暗さは特筆すべき魅力。2011年に発表された1stではさらにスケールアップし完全に別世界の境地だったりもしますが、その片鱗は今作でも十分に伺えます。

9枚目:Cyclamen ♪「Momeries」

日本、イギリス、タイを股にかけ活動する今西勇人氏による、国産逆輸入プロジェクトの2012年作2nd。1st「Senjyu」よりも僅かにDjent的な側面が強いですね。

先程に引き続き、Guilty Forestさまによるレビューご紹介。

最近になって国産のDjentと呼ばれるバンドも散見されるようになりましたが、その中でコチラをご紹介。海外での活動がメインでしたが先日日本盤も発売となり、今後の活動が注目されます。

音楽性としては、Sikthからの影響を覗かせる目まぐるしいリフワーク、一方で幻想ポストロックの音楽性を強く打ち出すパートとの大きな振れ幅、日本語をメインにした歌詞、という所です。(イギリスで日本語歌詞をやってたあたりかなり異端ですね・・・)

柔らかで中性的なクリーントーン、神秘的な情感、シーンの流行りとはまた違った魅力です。・・・日本語で歌う辺りは、どうしても好き嫌いの分かれるところだろうか。

10枚目:Tigran Hamasyan ♪「Red Hall」

最後は思いっきり異端に行きましょう。ジャズピアニストによる作品です。2009年作。
アルメニア出身の彼、影響を受けたアーティストの名前に、ジャズピアノの御大:Keith Jarrett氏を挙げるのと同時にMeshugghaの名前も挙げる猛者であります。

影響の話を始め、こちらのインタビュー記事が興味深い。

ヘヴィに吹き荒れるサックスのリズムは正にMeshuggah直系の「奇妙なグルーヴ」。Djentで目立つ「切れの良さ」とは全く別物ですが、こういうサウンドスタイルの存在はやはり無視出来ません。ていうかメタルじゃないのに・・・このメタラー大歓喜な攻撃性よ・・・!

(  '-')でもやっぱり10枚は少ないかも。

そんなこんなで、シーンに触れるきっかけにお勧めしたい10枚のアルバムをチョイスしてみました。いーかんじに大容量になってしまいましたが、如何でしたでしょうか。
・・・しかし語り足りませんねぇ。なんか追加のオススメとかしちゃってますし。とは言っても、情報過多もよろしくない・・・。
という訳で。
本まとめの締めといたしまして、「11枚目」を探すためのおまけなど。

冒頭で紹介したポータルサイト(編集注:2020年現在リンク切れ。無念。)にて、「A map of djent」というシーンを俯瞰できるデータ分析のエントリが上がっています。リンク先では2012年10月に発表された第四弾の紹介と、ごく簡単な和訳解説をしています。

Are you "Djentlemen"?

djentを嗜む紳士は皆そうさ!じぇんとるめん!
・・・え、女性はって?そりゃまぁ・・・えっと・・・これダジャレだからさ、深く考えないで行こ?(

・・・

移設後あとがき

文章がだいぶ瑞々しい。とはいえ7年前なのでさもありなん。
紹介時点で解散済みなバンドがいる一方で、まだ健在なバンドも多いのが何とも言えない嬉しさを感じる。(目下Uneven Structureの2019年作をヘビロテ中だったりして。)

ちなみにというかこの記事とは別にマイナー所を攻めた「裏のDjent10選」的な記事も作った記憶があるんだが、そっちは完全に紛失している。

さておき。

当時めちゃくちゃ厳選して作った記事なので今聴いてもテンションあがりますね。
5000文字を超える内容ではありますが、ここまで読んでいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?