【創作】その痛みはコンプレックスの悲鳴
マウスで幾度も切り替えられるレントゲン写真。
踝の辺りに小指の先ほどの骨が、孤立して浮かび上がっていた。
「大分昔のものだと思うんだけど。足に怪我をしたことはある?」
眼鏡のズレを戻しながら、医師が問う。
「はい。確か小学校の卒業式直前くらいだったと思います」
レントゲン写真がスクロールされる様子を眺めながら、さほど大きくない声で返答する。
本当はゴールデンウィーク前の捻挫。
つまりこれは嘘だ。
そう答えたあと、癒着だとか治らないだとかの単語が跡切れ跡切れに聞こえた