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2024.8.4 フジファブリック@東京ガーデンシアター



フジファブリック20th anniversary SPECIAL LIVE at TOKYO GARDEN THEATER 2024「THE BEST MOMENT」に行ってきました。

感情が溢れて止まらず、忘れないうちにすべてを書き留めたくて綴っていたらとんでもない分量になってしまった。もはや個人の感情がちょいちょい入ってしまったライブレポ。

あくまでこの日をできるだけ鮮明に残すための備忘録という感じでとにかく感情がデカいので、興味がないと読むのはしんどいと思います。フジファブリックが好きな方、興味がある方は是非読んでみてください。



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フジファブリックのワンマンライブが発表されるといつも、自分の仕事が入りがちな土日だろうが構わずファンクラブ先行で申し込んでいた。

一昨年の日比谷野音も、去年7月から9月に振替になったParticle Dreamsツアー東京も、11月のプラネットコロコロツアー東京も、今年4月のLINECUBEも、一縷の望みにかけてチケットを買っていた。しかし自分のライブが入ったり(仕事なのでもちろん優先します)体調を崩してしまったりで行けず、決して安くはないチケットを幾度となく無駄にしてしまってきた。

今回も日曜だしどうせライブが入って行けなくなってしまうなら、と端から諦め、申し込むのをやめてしまった。



2024年7月3日、Key. 金澤ダイスケさんの脱退に伴うバンドの活動休止が発表された。8/4のライブ予定が昼しか入っていないことを確認して、夜にライブが入りませんようにと強く願いながらすぐチケットを取った。

そんなギリギリのタイミングだったため、席はなんと最上階3階バルコニーの最後列。だけどすり鉢状のガーデンシアターはどの席からでもステージがよく見えて、距離はあれどその舞台を目に焼き付けることができた。



20年間の軌跡を辿るように歴代のアルバムの映像が流れメンバーが登場、1曲目の『STAR』でいきなり号泣。
志村さんを喪った3人の決意が込められた始まりの曲で、特別な一日が幕を開ける。この曲の照明はいつも絶対に白で、MVへのリスペクトが感じられるのが好き。

そこから『夜明けのBEAT』『徒然モノクローム』『電光石火』『プラネタリア』『Green Bird』(実は今回一番聴きたかった曲だったので嬉しい)と明るい曲が続いていたのに、ふとしたときに「でもこの人たちはもう少しで活動休止してしまうんだ、まだ時間はあるけどもう残されたライブの本数は本当に限られているんだ」ということを思い出してしまってまた涙が溢れてくる。


天井近い私の席からは会場全体が見渡せる。フジファブリックを愛している人がこんなにもたくさんいるのに、20年も活動していて来る者去る者ある中でほとんどの人が昔の曲のお決まりのキメから最近の曲の振付までちゃんと分かっているくらいライブにも来ているのに、活動休止してしまうなんて、悔しい。


ダイちゃん、辞めないでくれよ。
この前のアルバムにすべてを注ぎ込んで制作したというのなら、もう新曲なんて作らなくたっていいから。
今までの数ある大切な曲たちを私たちの前で演奏してくれるだけでいいから。

こんな勝手なことを言いたくなった。

いつもは金澤さんが喋るだけで笑っちゃうような私たちファンだが、先日の発表を胸に抱えていつもより落ち着いたトーンの声を聞いた途端、会場の空気がシンと張り詰めた。「悲しい感じにはしたくないんで、今日は盛り上がっていきましょう」苦しい。

金澤さんのMC後の『楽園』でKey.ソロの中、すっと近寄ってきて笑顔で金澤さんを見つめながらギターをかき鳴らすGt.&Vo.山内さんがカメラに抜かれた瞬間、また涙が溢れてきた。



『KARAKURI』がトリッキーに演奏されたのち、ブル転の中わずかに見えたのは、山内さんのエフェクターボードがセンターマイクの足元から少し上手に動かされている光景。

まさか、と思考を巡らす間に、山内さんが口を開く。


「今日は特別な日なので、志村くんと一緒に演奏します」



私がフジファブリックに出会ったのは10年ほど前、そのとき既に『天才』志村正彦はこの世を去っていた。彼の歌声を生で聴くことは叶わなかった。

その志村さんの歌声を流しながら演奏する。擬似的にだが彼のいるフジファブリックを15年越しに体感できる、貴重な機会だった。

何の曲が来るんだ、と期待に満ちた観客の耳に飛び込んできたのはアッパーなギターリフ。まさかの『モノノケハカランダ』に大歓声が沸き起こる。
続く『陽炎』では、センターマイクを志村さんに空けたことにより上手にずれた山内さんがBa.加藤さんのマイクでコーラスをしており、こんな配置だったんであろう頃に自分が出会えていなかったことが事実としてのしかかってきて、少し寂しくなった。

そんなざわつきを胸に抱えたまま迎えた次の曲は、大好きな『バウムクーヘン』。私が3456進行の曲が好きだと気付かされたのはこの曲だった。情緒が狂って顔がぐちゃぐちゃになるくらい泣いた。

ここまでお膳立てされたうえで満を持しての『若者のすべて』は、流石にずるい。耐えられるわけがない。嗚咽するくらい泣いた。


モニターに映し出される映像も、その曲を演奏している過去のライブ映像だったり、色々なところで撮影された昔のオフショット映像だったり、過去の志村さんの演奏シーンとたった今目の前で演奏している3人の映像が組み合わさってまるで志村さんがそこに"居る"ような錯覚に陥ったり。

私がこんな大きな感情を抱えてしまうなら、当時からフジファブリックを見ていた人たちはこれをどう受け止めるんだろう。諸先輩方に思いを馳せている間に、「Gt.&Vo. 志村正彦」の幻影は儚くも霧消してしまった。



会場の空気はすっかりしんみりとしている。山内さんのセットがセンターに戻される中、ここでまた本編にうまく引導を渡せる曲ってなんだろう、と待っていると始まるのは『Water Lily Flower』。山内さんの光のような歌声と金澤さん加藤さんの賛美歌のようなコーラスが響き渡る、あたたかい曲。
志村さんとの思い出も会場の空気もまるごと包み込むような形で、ひとつのフェーズが終着した。



ここで一息、山内さんからの「皆さんずっと立ってて、どうですか、ここで一旦東京ガーデンシアターの椅子の座り心地を確かめてみるというのは」という呼びかけでみんなで着席。山内さんはいつも「フジファブリックのファンは、本当に優しい人しかいないなあ」と言ってくれるけど、それはあなたたちの優しさが伝播しているからだよ。

音楽をやる人生と向き合って作られたというアコースティックな『月見草』が最新のアルバムから演奏され、座ったままゆったりと聴く。やっぱり途中の「口(くち)トロンボーン」が上手くてちょっと笑ってしまう。


順番が曖昧だけど、加トークはここだったかな?
ライブの2日前にお誕生日を迎えた加藤さんに7000人のおめでとうを浴びせたり、加藤さんがライブ恒例の謎かけを披露して聴衆を唸らせたり、自身のソロトークライブの宣伝を挟んだり、それに金澤さんがツッコミを入れてようやくいつものちょけの片鱗を見せてくれたり、感傷的な空気を吹き飛ばす加藤さんの喋りで一気に会場の雰囲気が明るくなり、心が軽くなった。

たくさん笑ってライブモードに引き戻された会場のボルテージを一気にMAXまで引き上げるように、『東京』『LIFE』『ミラクルレボリューション No.9』とサビで手を振る曲が立て続けに放たれる。
その最高到達点に待ち受けるのは「両の手を振って返し押して返し」という歌詞のまま手を翻して踊る『Feverman』。会場全体がお祭りムードに包まれる。


熱狂が渦巻く中、ワウがかかった印象的なギターリフが脳天を突き抜ける。一番好きな曲、『星降る夜になったら』が始まって私の興奮はピークに達した。

高揚感を掻き立てるような16分を刻むハイハット、和音がキラキラと輝くピアノ、サビ前のブレイクでベースが魅せるグリッサンド、会場みんなで声を揃えて歌うサビ、公式グッズのペンライトで観客が思い思いに灯した色が主に青と黄色に集約されることで客席に生まれる星空、この曲はあまりにも好きポイントが多すぎる。ライブ本編のラスト2曲という大事な箇所にこの曲が配置されたことが本当に嬉しかった。

(フジファブリックのライブで使われる制御なしのペンライト、持ち主がそれぞれ曲のイメージで色を変えるので、みんなのその曲に対して持っている色のイメージが分かって素敵だなと思う)

最後の一曲に選ばれたのは、最新アルバムでもラストトラックを飾る『ショウ・タイム』。
「自分たちバンドだけじゃなく、支えてくれる全ての人がショウ・タイム」と山内さんが語り、レコードのような少しこもったエフェクトの歌声で曲が始まる。次々と曲調が変わっていくさまはフジファブリックの20年間を詰め込んだ組曲のようで、きっとここに金澤さんのすべてが注ぎ込まれているんだなあ、と一つの区切りを感じた。



本編が終わり、彼らを呼び戻す手拍子を鳴り止ませたのはフジファブリックの走馬灯のような映像。BGMには『portrait』のインスト音源。やっぱり良い曲だな、なんて思いながらメンバーがステージに戻ってくるのを眺めていたら映像が終わり、メンバーを迎えるあたたかい拍手の中聞こえてきたのは、YouTubeに上がっていたライブ映像で聞いたことのある志村さんの言葉。


「この曲を歌うために、僕はずっと頑張ってきたような気がします」


そして志村さんの歌声とともに始まる『茜色の夕日』。志村さん亡き後山内さんが歌い継ぐ曲も多い中、もしかしたらライブで聴ける日は一生来ないのかもしれない、と思っていたくらい頑なに山内総一郎ボーカルでやらなかった曲。

やっぱりボーカルは山内さんじゃなかったし、志村さんの歌声もライブ映像で見ていた不安定なものじゃなく擦り切れるほど聴いた音源の歌声だったけど、確かに志村さんがボーカルを努めるフジファブリックが演奏しているのを生で聴くことができた。

人の記憶とは脆いもので、まだ数時間しか経っていないのにもう鮮明な記憶は彼方へと飛び立とうとしている。
この記憶をどうにか、一生のものにしたかった。


演奏が終わり、幻想の志村正彦はまた消えてしまった。
アンコールの挨拶で金澤さんが話し始めるも、その言葉にいつものおちゃらけた様子は欠片もない。ただ丁寧に、ゆっくり、言葉を選んで話していた。
2月で活動に区切りをつけるという決断を受け入れてくれたメンバーへの感謝には心が苦しくなったけど、二番手の加藤さんがふにゃっとカラッと明るく端的に締めてくれたこと、山内さんの「終わらんよ?」「これからのフジファブリックも、よろしくお願いします」という言葉に救われた。


いよいよこの特別な一日の終幕が目前であることを示したのは『破顔』。5年前の大阪城ホールで最後の最後、白い光の中この曲が演奏された景色は目に焼き付いて離れない。今までとこれからへの希望をストリングスとともに伸びやかに歌った、エンディングにぴったりな曲。

こんなにおあつらえ向きな曲があってなお、未来へのワクワクに満ち溢れ「トキメキをもっとちょうだい」と歌う『SUPER!!』を本当の最後に据えたのは、まだまだ枯れるつもりはないぞというフジファブリックの覚悟なのかな、と感じた。


私は今までのフジファブリックの歴史の半分しか共にしていないし、ボーカルの急逝というバンドにおける最大の壁をリアルタイムで目撃もしていない。
そんな私でもここまで大きく感情を動かされすっかり惚れ込んでしまったし、今日も小さな子どもから高齢の方まで老若男女様々な人が一堂に会していて、フジファブリックというバンドの魅力と幅広さを改めて感じた。

2025年2月以降のフジファブリックがどうなるのかは分からない。活動を再開したとしても、キーボードというフジファブリックの強い個性の一つが変わればバンドの雰囲気や曲も変わるのかもしれない。
それでもきっと、私はこれからもずっとフジファブリックを愛していくんだと思う。そうでありたいと固く決意して、ここに書き記しておく。

ちなみに私の一番好きな『星降る夜になったら』は、金澤ダイスケさん作曲でした。


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