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子(ね)の会 吟行合宿記⑥

 九時からすみれの部屋にて、恒例の深夜サロンが始まる。ドアが開いてひとが加わるたびに、たかだ牛道さんが乾杯の音頭を取ってくださる。短歌を始めたきっかけ、短歌人に入った理由、好きな歌人、刊行まであと一息の歌集、あるいは短歌とは特に関係のないことで、非常に盛り上がる。長谷川知哲さんが、長谷寺の門前で落手した紗の着物をお披露目する。上品な茶色が、お茶の先生でもある知哲さんによく似合う。
 知哲さんから一言。 

  「参加してくださるみなさまのおかげさまで、子の会合宿も、知哲邸での番外編を入れると今回で十回目になります。十年やってきて、みんなも十年、歳をとったということです。この話を他人事として聞いているあなたも、十年、歳をとったのですよ!当初は午前三時、四時まで深夜サロンをやってきましたが、子の会も高齢化してきたので、基本的に十二時で解散とします。」
「十二時になると魔法が解けるから解散するのでしょう?知哲さんは何に戻るの?」「基本的にって言いましたよね?そうですよね?」と聞き返す声、念を押す声が上がる。基本的には十二時にお開きとなったが、私も「応用」編に参加して、十二時を回っても深夜サロンに居残って喋り続ける。翌朝聞いたところでは、ゆりの部屋では二時過ぎまでお喋りが続いたそう。さすが女子会!

 息子のお弁当作りのために早起きする習慣が身体に染みついているのか、翌朝六時前に目が覚めて、海岸を散歩する。少し冷たい潮風が心地よい。防波堤で二羽の鳩の愛情深いダンスを目撃して、心震える。早起きしてよかった。  朝食後、各自三首選を提出し、はぎの間にて歌会。司会は前半が知哲さん、後半が禰子さん、選歌集計は斎藤さん。吟行歌会ならではの盛り上がりがとても楽しく、和やかな笑いと活気に満ちた三時間になった(詳しくは、小島熱子さん今夏発行「子の会ノ記」の「吟行歌会記」をご覧ください)。
 あじさい荘食堂にて、お別れ昼食会。司会は針谷さん、乾杯のご発声は小野澤繁雄さん。私の正面の席で、知哲さんが「ビールがおいしい!」としきりに舌鼓を打つ。幹事のお仕事、たいへんお世話さまでした。 
 デザートまで食べ終えて腹鼓を打つ頃、賞品授与式があり、斎藤さんの選りすぐった賞品が授与される。一位の斎藤さんは、大きな大仏の絵柄の手拭。二位の知哲さんは、紗の着物と同じ色合いの、小さな大仏柄の手拭。同じく二位の春野は、『ここからが空』のような色合いの紫陽花柄に小さな大仏の鎮座する手拭をいただきました。うれしい!四位藤本さん、五位田嶋さん、六位(六位タイ三名のうち、じゃんけんで勝ち抜いた)川井怜子さんはハンカチ、七位から十位は大仏の絵柄などの竹の栞。それ以外の方にも参加賞として、江ノ電の楽しいイラストの絵葉書が授与された。

 二〇一七年子の会合宿は、知哲さんのご挨拶と、斎藤さんの解散宣言で幕を閉じた。
 鎌倉に近い横須賀市民の斎藤さんをはじめ、知哲さん、禰子さん、今回遠方で参加されなかった弘井文子さんの四名の子の会世話人の方々が心の籠った楽しい吟行合宿をご準備くださったことに、この場を借りて改めてお礼申し上げます。 

  江ノ電の去りし庭には一陣の常盤の風がつつじをゆらす/田嶋麗 

 ※ 引用歌は、源実朝、与謝野晶子、春野りりん即詠(大幅に本歌取り)を除き、吟行合宿の詠草です。

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