桜田燐

読んだ本の感想とか、観た劇の感想とかを書いていこうかなと思ってます。

桜田燐

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最近の記事

夏目漱石著『門』読了。

ぬるっと、或いはサクッと終わった感じがしたのでとにもかくにも解説を読んでみる。 「人間関係(三角関係)に初めてメスを入れたという点で夏目漱石著作読者にとって重要な作品である」といった旨が書かれており、なるほど、と。 どこから書くかが難しいのでひとまずそこに焦点を置いて書こうと思う。 宗介と呼ばれる中年代の男が主人公で、その妻の御米と二人が中心となって話が進んでいく。 宗介には年の離れた弟の小六がおり、親戚の家にやっていたのだが親戚側のお金の都合により宗介の家にやってくること

    • 新潮社版『注文の多い料理店』読了。

      読み終わったあと、まず初めに「すごく面白い」と感じた。何故だか分からないけどとても爽やか(?)な読後感があった。 何が爽やかだったのかを考えてみる。 (爽やか、も表現としてヒットしてない気がする。でもとても近い。) 『実際の世界は不条理であまり清くない』ことが正直に書かれていて、それには世の中の定石に従わなければままならない自分への悲しみと家族への憐れみ、そんな純朴さとは真逆で欲に目がくらんでそれを利用して食い潰すやつ(前者を書くためには後者が必要)、そのハイブリッドみた

      • 新編『風の又三郎』読了。

        すごい気持ちになる。 失うということ、そしてそれは二度と元に戻らないという絶対的な規則。 『双子の星』の時は、最後には全て綺麗に元通り、めでたしめでたし…という感じだったが、今作は特に抗えない現実というか、まるで死へ向かうためのシミュレーションをしているかのような作品が多かった。 読みながら、「今まさに死ぬことだけは決まっていて、我々はそこに向かって進んでいるんだな」という、腹を括らざるを得ない気持ちになる。 喪失という出来事の不可逆さというか、それに対しての“絶望”とも

        • 新編『銀河鉄道の夜』を読んだ。

          今回読んだ本は『銀河鉄道の夜』だけではなく、その他の短編がいくつか、宮沢賢治が書いた時系列順に一緒に収録されていた。 宮沢賢治作品を教科書以外で読むのは初めてで、冒頭はかなり手触りを確認しながら読んだ気がする。 一番初めに載っていたのが『双子の星』、『銀河鉄道の夜』は中盤の方にあって、ラストが『ビジテリアン大祭』で終わる。(←これは時系列には関係ないらしい。) 読み始め頃の印象は、おとぎ話調で、すごく繊細で幸せな世界を描いていながら、苦というか負の感情の表現がやたらリアル

        夏目漱石著『門』読了。