スパイスの小袋。
元カノが食器棚の扉に貼り付けたままになっていたインスタント食品の小さなスパイスの袋を剥がした。
別れてからもう半年も経っていた。
貼り付けられてからは一年近く経っていただろうか。
今まで剥がさなかったのには思うところがあったからなのだけれども剥がしたことには別に特段理由があるわけでもなかった。
強いてゆうならちょっと酔っぱらていて暇してたからだろうか。
期待してたわけでもないが、記憶からは何も剥がれてくれなかったことにちょっとした安心と曖昧な輪郭の後悔が見える。
思えば僕はカサブタを剥がしてしまう子だった。
傷が治っているかどうかなんて考えずに。
別にそれが楽しいなんて思ってもいなかったけれどもそうしてしまう子だった。
思い出してみると剥がしたカサブタに1コンマたりとも注意を向けることもないくせに綺麗に剥がしたがっていたことに自分らしさが凝縮されていて少し笑える。
血が出たら失敗で出なければ成功みたいなゲームだったと今なら他人に説明できるけれども多分それだけじゃ説明不足でもある自分の世界の法則にのっとった小さな癖。
小さな袋を剥がした時に鮮明に思い出した小さな癖。
ああ、さっきのは成功だったのだろうか。
傷跡が開いた気はしなかったけれどもどうだろう。
今回は血が出た方が成功だった気もするがどうなんだろう。
相変わらず自分のことが1番よくわからない。
いや、考えてみるとそもそも傷つけられた事なんてなかったな。
コレは勝手に転んでできたアザでしかないか。
あの癖にはもっと他の目的があったのかもしれない。
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