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カラマーゾフ家に立ち寄った者

僕のよく知っている人物の話をしようかな、と思います。

その前に、別の一家のお話を。
ロシアに「カラマーゾフ」という名の一家がありました。
昔々のことです。
父親のフョードルは、精神性の欠片もない最低の男です。
3人兄弟のうち、上の2人はフョードルを憎み、軽蔑しています。
たぶん虐待もあったんじゃないかな。
たまに訪れるわずかな幸せが、父親の心ない暴力によって
簡単に壊される家だったのだろうと想像します。
父の気性の烈しさに呼応するように、二人の憎しみも烈しい。
修道僧の修行者である三男のアレクセイだけが、温厚です。

父親殺しが、いつ起こってもおかしくない一家。
ついに父が、料理人のスメルジャコフによって殺されました。
息子達の心に思い描いていたことが、第三者によって実現します。
兄弟は子供時代からその日まで、何千回それを願ったのでしょうか。

僕のよく知っている人物が、その家を覗いた時
似ている、と思ったそうです。
彼も常から、彼の家でそれが実現しないかなと
願っている人物でした。

彼が誰だか、読者のみなさんはすでにお察しかもしれませんね。


   今朝もまた父を割る鉈凍返る     梨鱗









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