半導体産業について #14 IPベンダー #2

株式会社リュディアです。今回も引き続き半導体産業についてまとめてみます。

前回までの 半導体産業についてのまとめ へのリンクは以下を参考にしてください。

今回は半導体IP の中のハードIPについてまとめてみます。Physical IP とも呼ばれるもので工場に密に依存した半導体IP で、他の工場で製造する製品にはそのままでは再利用不可能なものです。

ハードIP は大きくは標準IP とアナログIP にわかれると考えてください。まず標準IP から見ていきましょう。

標準IP はスタンダードセルと呼ばれる基本回路の集合、SRAMメモリ、標準IO が含まれます。まずこれらから見ていきます。標準 IP は元々は各工場、あるいは各ベンダーが準備しているものでした。それがシリコンファンドリーが普及してきたタイミングで標準 IP を各シリコンファンドリーごとに準備するような会社が現れました。米国の Artisan Components という会社です。また標準IP を提供する場合に各 EDA ツールで利用可能なライブラリと呼ばれる情報も提供する必要があります。Artisan Components はこれらの準備が早かったですね。大手のシリコンファンドりの標準IP を提供する会社としては実質業界標準となりました。

同じような時期に米国の Virage Logic も Artisan Components と同じようなビジネスモデルを提供し始めました。Virage Logic は特許をベースに面積の小さいスタンダードセルライブラリで勝負を仕掛けました。また SRAM も評判がよかったです。

また SRAM に関しては、どのようなサイズのSRAMを生成するかは回路設計者に依存するので SRAM の半導体IP を生成するためのプログラムが提供されることが多いです。SRAMジェネレータやメモリコンパイラと呼ばれるソフトウェアが提供されることになります。細かい話になりますがワード数やビット数をソフトウェアに指定して生成することで EDA で利用するライブラリ類が生成されます。

しかし結局、Artisan Components は英 ARM に買収され、Virage Logic はEDAベンダーの Synopsys に買収されました。この段階で実質、標準IP を提供するシリコンIP ベンダーは無くなったと言えると思います。今は大手のファンドりはスタンダードセルやSRAMジェネレータを自社で提供しているところも多いです。

次にアナログIP についてです。こちらは各社いろいろあるので分類は難しいのですが EDAベンダーとしても有名な Synopsys と Cadence が2強です。それ以外に PLL 専業の半導体IPベンダーであったり、不揮発性メモリ専業の 半導体IP ベンダーであったりという具合に存在します。

例えば DDR DRAMメモリインタフェース、USB、HDMI などのアナログIP は EDAベンダーでもある Synopsys と Cadence が強いです。実際には EDA ベンダーと同様、IP ベンダーにおいてもこの2社が買収を繰り返しているだけではあります。ただ新規で開発するより既に安定した会社を買収した方が確かではあります。

またPLL や DLL といった特定の領域に注力したアナログ IP のベンダーとしては Silicon Creation や True Circuit Inc. があります。台湾の eMemory や不揮発性メモリ専業の半導体 IPベンダーです。

今回はハードIP と呼ばれる半導体製造工場に密接した半導体IP についてまとめました。次回はソフトIP についてまとめてみます。

半導体産業について に関するまとめの続きは以下からどうぞ。

では、ごきげんよう。

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