アジア進出を成功させるための『採用』と『組織カルチャー作り』とは〜イベントレポート
2019年10月25日に、東京渋谷にあるオープンイノベーション拠点「hoops link tokyo」で、台湾人材マーケットの魅力をお伝えするイベントが開催されました!
今回のテーマは「アジア進出を成功させるための『採用』と『組織カルチャー作り』とは」。
会社設立3年目にして台湾へ進出したスタイラー株式会社の代表取締役CEOである小関 翼氏と、台湾でIT業界最大手の人材採用プラットホーム「Yourator.co」の創業者である Lydia Chen(リディア チェン)氏の対談形式による講演が行われました。
このレポートでは、当日語られた台湾現地での成功・失敗事例についてなどをお届けします。
イベントの始まりに、両者から会社と自身についての紹介がありました。Lydia氏は台湾出身で、早稲田大学国際教養学部卒業後、アメリカのノースウェスタン大学のマーケティング大学院を修了し、2012年からグリーで事業企画、経営戦略に携わり、LINE株式会社を経て、2016年に台湾で HRテックカンパニーを起業。
扱うサービスは, IT 人材のマッチングに特化した求人メディア「Yourator」と応募管理ツール「Teamdoor」 のふたつがあります。「Yourator」は現在、台湾のスタートアップとベンチャー企業に一番使われている求人サービスで、台湾だけではなく、日本、シンガポール、香港さらにはシリコンバレーも含まれクライアント数は1000社以上です。Teamdoorはクラウドベースの応募管理ツールで、現在は中国語、英語、日本語の3カ国語でサービスを提供しています。
Lydia氏の起業のきっかけは、グリー株式会社で働く時期に、日本企業の人材育成および人材戦略に対する姿勢に共感し、そして台湾に帰国後、現地企業の人事領域では企業文化や組織作りに関する議論が少なく、即戦力を求めるため人材育成をあまりしない状況を見て「日本での経験を活かして、台湾の人材市場をより良くしたい」という思いを持ち、事業を始めました。
スタイラー株式会社の小関氏はメガバンクやAmazonで働いた後に起業されました。起業のきっかけは、Amazonで働いていた時に、「どうしたらファッションの買い手が欲しいものをより簡単に探せる購買体験を作れるか」を考えたこと。それを追い求めた結果、「チャットを通じたコミュニケーションEコマース」という答えにたどり着きました。さらに、日本のアパレルの購買チャネルは9割がオフライン経由での購買であることに着目し、提供するサービスはオフライン在庫をメインとして展開しています。
スタイラーは現在設立して3年目ですが、小関氏は起業2年目からアジアマーケットに目を向け、台湾で拠点を作りました。日本のベンチャー企業の中では異例のスピードです。なぜ早い段階で海外事業を始めたかというと、日本のスタートアップイベントで海外からの起業家と話した際に、海外のモバイルEコマース市場は非常に大きく、魅力的だと感じたからだそう。現在は台湾と中国で事業展開をし、今後もさらなるアジア展開を予定しています。
Lydia氏によると、台湾の人口数は日本より大きく下回りますが、外資系企業にとっては魅力的な人材マーケットとのこと。人口数が約2300万人の台湾では、海外で働く人口はすでに70万人を超えていて、そのうち74%は大学卒の人材です(台湾『行政院主計処』「海外で勤務する人口数」のデータより)。この現状が起こっている理由は、台湾国内の景気が悪いゆえに近年平均賃金が上がらず、優秀な人材はグローバルな舞台で挑戦したいという思いが強いことが挙げられます。また、LinkedIn のデータによると、過去一年間に転職した台湾人LinkedInユーザーのうち18%は海外へ転職し、転職先の第3位は日本です。
最近では、海外企業が台湾の人材を本社採用するだけではなく、台湾に進出して開発センターを作ることも増えてきました。GoogleはスマホメーカーHTCの一部の事業を買収することによって、すでに台湾で約2000人の従業員を雇い、今後はさらに人員を2倍にする採用計画で動いているそう(参考資料)。この勢いで、台湾はGoogleのアジア最大の開発拠点になることが予想されます。
Googleのほか、MicrosoftやLINE、アジアのユニコーンカンパニー、例えば、Carousell, Garena, Honestbee なども台湾で大規模の開発人材採用を行っています。日本で有名なゲーム会社株式会社アカツキも台湾で積極的にソフトウェアエンジニアを採用しています。
このような開発センターの他、台湾をカスタマーサポートセンターとして拠点を作る企業も。香港発のユニコーンカンパニーである旅行系ベンチャー企業Klookは、今年一気に200人規模の拠点を作るために採用活動をしています。
台湾で開発センターを作るメリットは、経営コストの最適化です。台湾は採用費、人件費、オフィス家賃などが日本より安いので、多くのベンチャー企業にとっては開発費用を抑え、資金をプロモ―ション予算に回すことが可能です。実際台湾に拠点を持つ小関氏に聞くと、現在台湾への進出コストは月間は約150万円となります(現地4~5名体制)。
なぜ台湾の人材マーケットが注目を浴びているかというと、理由は3つあるとLydia氏は語りました。
一つ目は、豊富な理系人材がいること。台湾はもともと半導体‧ハートウェア産業が強いため、国民教育は理系に力を入れています。この数年、ハートウェア産業の不況により人材はどんどんソフトウェア業界にシフトしています。
二つ目の理由は、台湾人は英語と日本語のコミュニケーション力が高いこと。台湾の国内市場は小さく、台湾企業は外国との取引も多いため、幼い時から英語を学ぶ人が多く、英語力はアジアの国の中でトップレベル。また、日本のアニメやドラマで日本語を覚えたという人は大勢いるほど親日国で、日系企業に就職したい人も多数います。
三つ目の理由は、人件費が低いこと。最近は外資系企業が台湾で開発センターを設置しているため、IT人材、特にエンジニアの給与レベルは上昇傾向ですが、日本、シンガポール、シリコンバレーなどよりは下回ります。
台湾人材採用のメリットについても共有がありました。日本と違う側面も多く、台湾特有の人材採用や人材管理で心がける必要があることも。例えば:
(1) 台湾での転職率は日本より高く1年〜1年半で転職する人が多い。
(2) 台湾はソーシャルメディア利用率が非常に高く、かつ転職口コミサイトが多数存在するため、求職者の対応を丁寧にしなければならない。
(3) 台湾は労働基準法の改正が多く、直近3年間だけで数回最低賃金が改定されているため、常に最新の法律を確認することが必要。
(4) 人材の特徴としては、台湾は職場での上下関係が薄く、かつ意見をはっきり言うタイプの人が多いため、マネージャーがスタッフの話をきちんと聞くことと、業務を依頼する時に、理由を説明することがかなり重要。
スタイラー株式会社の小関氏からも、台湾人材についての共有がありました。「台湾は中国と日本の文化が混ざっている感じで、日本文化を理解してくれる人が多いのがメリットです。また、個人主義的で理論的に物事を考える人が多いですね。その一方で、企業は即戦力を求めるケースが多いため、台湾では若者の雇用状況が良くありません(かつ勤続年数が日本より短いため、転職の際もキャリアアップにつながらない人が多い)」。また、シニア人材の育成が難しいという側面もあります。」
台湾だけではなく、スタイラー株式会社は東京渋谷にある本社でも、外国籍の社員比率が50%となっています。なぜ多国籍のメンバーを集めたかというと、小関氏は「日本は経済大国の割に、ICT 人材の供給は他の国より少ないんです。だから、最近はエンジニアとデザイナー職を中心に、外国人材を積極的に採用しています」と答えました。
また、人材の多様性についても以下のように述べました。
「日本のスタートアップは男性比率が圧倒的に多く、かつ日本の大学の部活のような雰囲気です。スタイラーでは、いかに多様性のある組織を作るかを常に考えています」
最後に、スタイラー株式会社の今後については「いかにして半径3キロ以内で、ベストな購買体験を作るかに力を入れていきます。素早くユーザー情報とリアル店舗の情報をマッチングし、精度の高い店舗情報とレビューを提供し、友人と話すような店員さんとのコミュ二ケーションを生み出すこと。この3つの要因で、最高の購買経験を提供したいですね。また、実店舗との提携や運営も進めて、より新しい購買体験を作っていきたいです」と述べました。
スタイラー株式会社では、採用も絶賛実施です、募集中のポジションはこちらのサイトで確認してください。
台湾での人材採用のお問い合わせは service@yourator.co まで
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