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身を飾ることについて|エッセイ

 私はかつて、アクセサリーをなくさずにはいられない女だった。人並みにおしゃれに興味があったので、華奢なネックレスや個性的なヘアアクセ、かわいい指輪など、大学生の頃はちまちまと買っては、なくすか壊すかしていた。ピアスを開けていたこともあるけれど、1年と経たずに閉じた。
 そしてそのうち、アクセサリーを着けなくなった。

 アクセサリーはいい。シンプルな服装のアクセントにもなるし、きらきらしたものを身に着けるだけで、その日は上質な自分の気分になれる。
 残念なことに私は、アクセサリーが性に合わなかったようだ。大事にしまっておくことも手入れすることもできないから、ほとんどの物が半年保つことなかったんじゃないかと思う。いや、3ヶ月かも。

 けれどそんな私も、今指輪だけはずっと着けている。祖父にもらったシグネットリングと結婚指輪。それに、今リフォームに出しているものも含めると4つになる。
 これらの指輪は、絶対になくすことがない。着けっぱなしだからというのもあるけれど、どれもお金に変えることのできない価値を持っているからだ。
 つまるところ、大事にする理由がきちんとあれば、私はアクセサリーと共存できる。かつてできなかったのは、「かわいいな」と思って買ったものでも、愛着や想い出が足りなかったからだろう。

 たまに想像することがある。
 絶体絶命の窮地に陥り、貴金属を差し出せば生命は助かる状況になった場合、私はこれらを手放すだろうか、と。
 無論そのときによるだろうが、今のところ、答えは否だ。
 たかが装飾品、されど装飾品。想いの籠った品で身を飾ることによって私は守られる。
 身を飾ることは、私にとって鎧を纏うことと同じなのかもしれない。

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