満たすモノ|ショートショート
ぺろり、と上唇を舐めた。生クリームの味。昔あんなに大好きだったのに、今ではちょっと重いなと思う味。
「でね、どう思う? もうほとんど1年もしてないの」
目の前に座る彼女は、あたしと同じものを飲んでるはずなのに生クリームが上唇に付かない。器用だからなのだろうか。
「1年かー。それは長いね」
かく言うあたしは、ほとんど1年恋人もいない。彼女が左手で飲み物を手に取った。薬指の指輪がきらりと光る。自慢のダイヤモンド。
「こども欲しいのに、こんなんじゃ困る」
くいっと寄せられた